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2022年8月13日(土)

きょうの潮流

 「人は死んでも違う形で生き始める」。枯れ葉剤をテーマにしたドキュメンタリー映画「失われた時の中で」(20日から順次公開)をつくった坂田雅子監督は、こう話します▼アメリカ人の夫・グレッグさんは写真家でベトナム帰還兵。2003年、枯れ葉剤が原因と思われる病で急逝したことを機に、55歳で映像作家として歩みだしました。以来18年。ベトナムに通い、枯れ葉剤被害者を取材することは生活の一部になっています▼公開中のドキュメンタリー映画「長崎の郵便配達」も遺志を継ぐ物語です。主人公は俳優のイザベル・タウンゼンドさん。父は元英軍将校で戦後は国王の侍従武官をへて作家に。世界を旅し、戦争被害に遭った子どもたちを取材する中で、郵便配達中に被爆した谷口稜曄(すみてる)さんと出会い、ノンフィクション小説を書きました▼なぜ父は長崎へ行ったのか。「赤い背中」の谷口さんとはどんな交流があったのか。父の死から23年後、自身も長崎へ向かいます。父の著書とボイスメモを手がかりに、谷口さんが被爆した周辺などを訪ね歩くイザベルさん。「核戦争は絶対起きてはいけないのだ」との父の言葉に自身も何をすべきか考えます▼亡き人の思いは新たな語り手を得て羽ばたきます。坂田監督は枯れ葉剤被害に苦しむ子どもたちを支援する奨学金を設立。イザベルさんはフランスの学校で谷口さんの話を盛り込んだ演劇をつくりました▼世界は捨てたものではない。そんな勇気を与えてくれるエピソードです。


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