しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年8月9日(火)

NPT再検討会議 NGOセッションでの発言(要旨)

写真

(写真)NGOセッションで発言する笠井氏(中央列右から)と和田氏=5日、ニューヨークの国連本部(石黒みずほ撮影)

 【ニューヨーク=加來恵子】5日開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議のNGOセッションでの、原水爆禁止日本協議会(日本原水協)を代表した笠井亮氏(日本共産党衆院議員)、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の和田征子事務局次長の発言の要旨を紹介します。

合意再確認し実行を

日本原水協を代表して 笠井亮議員

 この会議は、核大国の一つが他国への軍事侵攻を続け、核使用の威嚇をくり返し、他方で、他の核大国や核依存国が核軍事同盟の拡大、核兵器の増強・近代化などをすすめ、世界がかつてない核兵器使用の危険に直面する中で開かれています。

新たな惨禍防ぐ

 77年前、二つの原爆の惨禍に見舞われ生き延びた被爆者は、「被爆者がいなくなるとき、世界は3度核の惨禍に見舞われるかもしれない」と感じ、「被爆者の生あるうちに核兵器の廃絶を」と訴え続けています。

 新たな核の惨害を防ぐことはNPTも前文冒頭に掲げた目標です。この会議が国連憲章を想起し、まず第一に核兵器の使用・威嚇を非難し、その放棄を明確に宣言することを求めるものです。そして、核兵器使用を防ぐ唯一の確実な保証として、会議が、とりわけ第6条および2010年再検討会議をはじめ、「核兵器のない世界の平和と安全」の実現に至るこれまでのすべての合意を再確認し、直ちに実行に踏み出すべきことを強く主張します。

 本再検討会議が進行しているいま、私たちは被爆地広島と長崎で、原水爆禁止2022年世界大会を開催しています。この運動は、世界が原爆から水爆へと移行し、人類の生存が危機にさらされた時代の1955年に始まり、原水爆の禁止を掲げて毎年、休むことなく続けられています。

 私たちが、ことし課題の一つとしているのは、「核抑止力」論の虚構を打ち破ることです。周知のように、核兵器は最初の瞬間から、敵を破壊し、殺し、降伏させるために造られ、実際に使われました。結果は、政府が始めた戦争で国民が殺され、原爆で殺された一般市民の数は86%に上りました。

 核兵器の保有国たちは自国の核を「抑止力」だといい、いまも「世界に核兵器が存在する限り、核抑止力を保持する」と言い続けています。すでに77年前に、それが人類を絶滅に導く兵器であることに気づき、「各国の軍備から一掃する」(国連総会第1号決議)に合意したはずの兵器を、です。それは理性の崩壊であり、その無法が許されるなら、「不拡散」の枠組みも完全に崩壊するでしょう。

 私は、今広島に集い、あるいはオンラインでつながる原水爆禁止世界大会参加者とそこに至る多くの運動からの声を、以下、簡潔にお伝えします。

 ・核兵器使用と威嚇を非難し、「核兵器のない世界」実現の道を開くこと。

 ・核軍備競争の停止、核軍備撤廃の交渉を定めたNPT第6条の義務、並びに核兵器国による「自国の核軍備完全廃絶」の「明確な約束」(2000年)、「核兵器のない世界の平和と安全の達成」及びそのための「枠組」の確立(10年)、中東非核兵器地帯の実現(1995年)など、これまでの合意を確認し、遅滞なく履行に踏み出すこと。

 ・核兵器の廃絶を求める世界の世論に支持され、決議され、発効した核兵器禁止条約を国連憲章ならびにNPT履行を前進させる努力として認め、理解し、尊重すること。

理性と外交の力

 最後に私は、唯一の被爆国日本で活動するNGOの一員として申し上げます。東アジアでも核やミサイル、軍事衝突の危険は高まっています。しかし、それは、力対力、軍事対軍事の対決によってではなく、逆に、軍拡や核兵器依存の悪循環から抜け出し、理性と外交の力を認識・実行することによってのみ、解決へと進むことができます。それは、日本国憲法が私たちに指し示す道であり、政府と国民が守り、実行すべきルールでもあります。そのことを指摘して、発言を終わります。

英知と良心で核廃絶

日本被団協事務局次長 和田征子さん

 長崎が原爆によって甚大な被害を受けたとき、私は1歳10カ月でした。爆心地から2・9キロ離れたところに自宅はありました。

 市街地は山に囲まれた長崎の地形のおかげで、直撃を受けることなく、これまで生きながらえました。母は何度も繰り返し体験を語っていました。

人間の尊厳とは

 家の隣の空き地には、毎日集められた遺体がごみ車(箱形の大八車)で運ばれ、毎日そこで焼かれました。母は誰もがその数にも、臭いにも何も感じなくなっていった、と言っていました。人間の尊厳とは何でしょうか? 人はこんな扱いを受けるためにつくられたのではありません。

 アメリカによる初めての核兵器の使用から77年がたちました。被爆者はいなくなるでしょう。しかし、その前に3度目の核兵器の使用により、新たな被爆者が生まれるかもしれません。

 2017年に核兵器禁止条約(TPNW)が採択されたとき、被爆者は生きていてよかったと心から喜びを分かちあいました。長年たたき続けてきた、重いさびついた扉が、開きはじめ一筋の光が差し込んできたと感じました。しかし、その扉の内側に見えたのは、巨大化する軍事費、日々開発進化する大量の兵器でした。

傲慢さ認識して

 NPT発効から52年。核保有国とその同盟国は、彼らの不誠実さと傲慢(ごうまん)さのために、人類全体が核戦争の瀬戸際にあることを認識すべきです。

 国を代表してここに出席の皆さんお一人お一人の良心と英知に訴えたい。この再検討会議において2010年に再確認された核兵器廃絶の「明確な約束」の履行を、誠実に議論していただきたい。

 核兵器は人が造り、そして人が使いました。そうであればなくすことができるのも、人の英知と公共の良心であり、責任です。

 ノーモア 被爆者!ありがとうございました。


pageup