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2022年8月9日(火)

「核兵器のない世界」――現状と展望をどうみるか

広島 志位委員長の記者会見

 日本共産党の志位和夫委員長が6日、広島市内で行った記者会見でのやりとりは次のとおりです。

岸田首相のあいさつ

核禁条約、NPT第6条――「核兵器のない世界」をつくる“車の両輪”をスルー

写真

(写真)記者の質問に答える志位和夫委員長=6日、広島市中区

 記者 広島の平和式典での岸田(文雄)首相のあいさつへの感想はいかがですか。

 志位 率直に言って中身のない(ものでした)。核兵器禁止条約がこれだけ大きな焦点になっているのに一言も触れない。(禁止条約が)世界に存在しないかのように扱っている。これでは、世界で唯一の戦争被爆国の首相としては、恥ずかしい態度といわないといけない。

 それから、今行われているNPT(核不拡散条約)再検討会議で一番議論になっているのは第6条(核軍縮・撤廃)なんですね。世界の多くの国と市民社会が、第6条の重要性を強調している。第6条に基づく合意をどう発展させるかを強調している。ところが、(岸田首相は)NPTのことをさかんにいうが、第6条には一言も触れない。

 核兵器禁止条約、NPT第6条――この二つは、「核兵器のない世界」をつくるうえでの“車の両輪”だと思うんです。ところが“車の両輪”とも言わない。つまり進まないということです。

 記者 物足らないということですか。

 志位 物足りないというより、一番大切な部分をスルーしている。核兵器禁止条約、NPT6条に基づく合意を前進させる。いま国際社会が一番努力している二つの問題をスルーしている。ここに大きな問題があると思います。

核兵器をめぐる状況

NPT第6条に基づく合意を前進させるか、後退か――激しいせめぎあいが

 記者 今年は、ロシアのウクライナ侵略のもとでの8月6日ですが、核兵器をめぐる状況をどう見ていますか。

 志位 ロシアのウクライナ侵略は、核兵器をめぐっても深刻な危機をもたらしています。同時に、この問題が何を明らかにしたかといいますと、「核抑止論」がいよいよ無力になったということだと思います。プーチン政権のように、自分の国の国民にどんなに犠牲が出ても意に介さない。プーチン氏の言葉で言えば、「ロシアのない世界など無意味だ」と、こういうことを公言する。そういうリーダーが出てくるもとで、核兵器を持っていれば安全が保障されるという「核抑止論」はいよいよ無力になっています。世界中から核兵器をなくすことに真剣に緊急に取り組む。これ以外に、核兵器使用の危険性を回避する手段はないということが、いよいよ明らかになったという状況だと思います。危機は深いのですけれど、いよいよもって、核兵器廃絶の方向に緊急に向かわないといけない、この重要性が増してきていると思うんですね。

 いま行われているNPT再検討会議に、日本共産党は、笠井(亮衆院)議員を団長とする代表団を派遣しておりまして、電話で状況を聞いていますが、再検討会議の一番の焦点は、第6条に基づくこれまでの合意を、再確認・前進させるか、それとも弱体化させるか。このせめぎあいになっています。

 世界の圧倒的多数の国ぐにと市民社会はNPT第6条に基づく合意の再確認と具体化、実行を求めている。もし核保有国が第6条に取り組まなかったら、NPTという体制は持たないわけですよ。NPTはものすごく不平等な条約です。それでも世界がこの条約を認めているのは、核保有国が第6条で「核兵器をなくすための交渉をやります」と約束したからなんです。いま、その実行を世界中が迫っているわけですね。その時に、日本政府は一番大事な問題を一切スルーしている。(核兵器禁止条約のスルーとともに)二重のスルーなんですよ。日本政府として「核兵器のない世界」をつくるうえで役割をまったく果たせていない状況です。

安倍・菅両氏との違いは

代わり映えしない――日本政府の「核抑止論」への縛られ方は尋常ではない

 記者 岸田首相のあいさつを、安倍(晋三)・菅(義偉)首相と比較して違いはありますか。

 志位 代わり映えしないですね。基本は同じですから。一番のベースにあるのは「核抑止論」に縛られているということです。これは微動だにしない。これはもう政治を変えるしかありません。しかも、日本の縛られ方は尋常ではない。ドイツ、ノルウェー、ベルギー、オランダ、オーストラリアなどは、(米国の)「核の傘」のもとにある国ですよ。それでも(核兵器禁止条約締約国会議に)オブザーバーで参加するわけです。ところが日本の場合、オブザーバー参加すらしないのですからね。縛られ方が尋常ではない。がちがちに縛られているという状況だと思います。

G7サミット

核兵器問題でも、ウクライナ問題でも、軍事同盟に縛られている

 記者 来年の広島でのG7(主要7カ国)サミットに期待することは何でしょうか。

 志位 今日の世界で、G7という枠組みがどういう役割をはたしているか。簡単に言えば、この枠組みは、アメリカを中心とした軍事同盟国で構成されているものです。ドイツは(核禁条約締約国会議に)オブザーバー参加しましたが、基本は、核兵器禁止条約に背を向けている。

 もう一つ、G7が中心になって非常に重大な分断を世界に持ち込んでいる。つまり、バイデン米大統領がいうように「民主主義対専制主義のたたかい」だと、特定の「価値観」で世界を二分している。こうして世界を二分するとウクライナ問題の解決は遠のくことになります。そうではなく、「ロシアは侵略をやめろ」「国連憲章を守れ」、この一点で全世界が団結する。これが侵略を終わらせるうえで何より大事です。ところがG7という枠組みは、バイデン米大統領と一体に世界に分断をもちこんでいるのです。

 こうしてG7という枠組みは、核兵器の問題でも、ウクライナの問題でも、軍事同盟に縛られた対応になっています。だから(G7サミットに)期待できません。根本的な政策変更をすれば別ですが。現状では期待できません。期待するほうがおかしい。

NPT再検討会議

これまでの到達点を弱体化させず、前に進めるためにあらゆる努力を

 記者 NPT再検討会議の今後の議論の見通しをどうごらんになっていますか。

 志位 核禁条約第1回締約国会議で議長を務めたオーストリアのアレクサンダー・クメント大使と、笠井議員らが3日、国連本部で懇談して、わが党の要請をつたえつつ意見交換をしました。クメント大使は、締約国会議で採択された「ウィーン宣言」が核兵器廃絶への明確な道を示したと強調しつつ、「再検討会議でこれまで勝ち取った前進を弱体化させないよう、あらゆる努力をしなければならない」とのべたとのことです。

 NPT再検討会議では、とくに2000年と2010年の再検討会議では、条約第6条にもとづいた「核兵器のない世界」の実現につながる2回の重要な合意があるわけです。この到達点を後退させず、どうやって前進させるか。これができるかどうかが問われているところだと思います。

 前向きの成果文書が採択できるかどうか、なかなか予断をもっていえませんが、世界の圧倒的多数の国と市民社会は第6条にもとづく前進を願っています。再検討会議でも、その立場からの多くの国の発言が続きました。岸田首相の前に発言したフィジーの代表も「6条が一番大事」と発言したとのことでした。そのあと岸田氏が第6条をスルーする発言をしたわけですが、世界の圧倒的多数の国と市民社会は第6条に基づく合意を前に進めてほしいと願っている。その声にこたえられるかどうかが今問われています。


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