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2022年8月9日(火)

主張

「黒い雨」の認定

被害の全面的救済に踏み切れ

 アメリカが長崎に原爆を投下した1945年8月9日から、きょうで77年です。「長崎を最後の被爆地に」。ロシアのウクライナ侵略によって核戦争の危機が高まる中、被爆者の思いは一層切実です。被爆者の悲願である核兵器禁止条約への参加を拒み続ける岸田文雄政権の姿勢が厳しく問われます。

 被爆者行政でも岸田政権の冷たさがあらわです。それは原爆投下直後に広島と長崎に降った「黒い雨」による被害の幅広い認定に背を向けていることに示されています。原爆で被害を受けた人をいつまで苦しめるのか。国は一刻も早く全面救済に踏み切るべきです。

国は司法判断に逆らうな

 広島高裁は昨年7月、「黒い雨」に遭った広島県内の住民84人を被爆者と認め、国が指定した区域外での被害を認めてこなかったことを違法としました。被爆者の該当基準について「原爆の放射能により健康被害が生じることを否定できない」ことを立証すれば足りると判断しました。がんなど原爆の影響が考えられる疾病の発症がなくても被爆者と認めるという判決は、被害を矮小(わいしょう)化し救済対象を狭めてきた国の被爆者行政の根本的転換を迫ったものです。「黒い雨」に直接打たれていなくても、空気中の放射性微粒子を吸った場合などの健康被害の可能性にも高裁判決は言及しています。

 早期解決を求める世論が高まり、国は上告を断念しました。その際、菅義偉首相(当時)は「(原告と)同じような事情にあった方々については、訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう、早急に対策を検討します」とする一方、飲食物の摂取による内部被ばくの影響などの司法判断は「容認できるものではない」とする談話を発表しました。

 今年4月、区域外で「黒い雨」に遭った人にも救済対象を広げた新しい認定基準での申請が広島で始まりました。しかし国は、首相談話の容認できないという部分に固執し、がんなど11疾病を認定の要件に盛り込みました。これが“新たな線引き”となって被害者を選別し、切り捨てにつながるとの批判が相次いでいます。国は、広島高裁判決に立ち返り、11疾病の認定要件は撤廃すべきです。

 新しい基準でも長崎に「黒い雨」が降ったと認めず、救済から除外していることは極めて重大です。長崎では国の指定区域外を理由に被爆者と認められない「被爆体験者」が数多くいます。長崎県・市は、被爆者の援護で広島と格差が生まれないことを強く求めています。

 長崎県は7月5日、原爆投下直後に「黒い雨」が降ったと結論付けた県の専門家会議の報告書を政府に提出しました。県と市が1999年度に行った証言調査などを再検証したもので、「黒い雨」は客観的に記録されているとしました。雨だけでなく、降灰を含む放射性降下物全体で検討する必要があるとも強調しました。国は報告書を真剣に受け止め、「被爆体験者」を被爆者と認定すべきです。

残された時間は少ない

 広島の「黒い雨」訴訟では裁判中に亡くなった原告が少なくありません。被爆者の高齢化は進み、平均年齢は84・53歳です。残された時間は多くありません。国の責任で戦争被害を救済するとした被爆者援護法の精神に基づく人道的立場からの施策を急ぐ時です。


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