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2022年8月9日(火)

きょうの潮流

 被爆77年の長崎原爆の日を特別な思いで迎える被爆者がいます。田崎禎子さん、81歳。被爆者歌う会「ひまわり」の5代目会長です。うたごえで、核兵器の廃絶と世界平和を訴えてきました▼9日の長崎市平和式典でも例年、主宰者で指揮者の寺井一通さんが作詞作曲した『もう二度と』を披露してきました。田崎さんも「叔母たちが城山で被爆し亡くなったので式典で歌えば供養になる」と、08年団員に加わりました▼叔父も父親も兵隊にとられて記憶にありません。「父がフィリピンで戦死したという一枚の知らせ」がきたのは45年6月。35歳の若さでした。被爆したのは、母が幼い田崎さんら三姉妹を連れて長崎市愛宕に疎開していた祖父母宅にいった時でした▼母は再婚し、養父の手前、戦争も被爆のことも話しませんでした。「父はどんなに家族のことを心配しながら亡くなったことか。原爆も、戦争したせいで落とされた。母や私たちの人生は戦争で狂わされた」と。ウクライナで逃げまどう母子の映像が重なるとも▼コロナ禍の2年間、レッスンで集まることが困難でした。いきがいを奪われた田崎さんは母や妹、夫を思いながら鶴を折り続けました。寺井さんと相談し“歌う最後の式典”として3年ぶりに4月レッスンを再開しました▼式典前日に3000羽の折り鶴を平和公園に捧(ささ)げました。「仲間のつらい別れもあり、その人たちの気持ちの分も歌に込めたい」。戦争も核兵器もなくして―被爆者の平和のうたごえ、世界中に響けと。


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