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2022年8月7日(日)

原水爆禁止2022年世界大会ヒロシマデー集会

「広島宣言」

 広島市で6日に開かれた原水爆禁止2022年世界大会・ヒロシマデー集会で採択された「広島宣言」は次の通りです。


 広島と長崎にアメリカの原子爆弾が投下されてから77年をむかえた。しかし、人類はいま、新たな核使用の危険に直面している。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵略を続けるなかで、核兵器による威嚇をくり返している。ロシアだけでなくアメリカや北大西洋条約機構(NATO)も「核抑止力」の維持・強化をはかっている。人類史上はじめて、筆舌に尽くしがたい核兵器の被害を体験した広島から、被爆者とともに世界に訴える――核兵器は、人間として死ぬことも、人間らしく生きることも許さない、「絶滅」だけを目的とした「絶対悪の兵器」である。その使用も、使用の威嚇も断じて許してはならない。その危険を根絶するには、核兵器の完全廃絶以外にない。我々は、新たな決意をもって、「核兵器のない平和で公正な世界」の実現にむけて歩みをすすめる。

 国際政治も今日の危機をのりこえ、前進しようとしている。歴史上はじめて核兵器を違法化した核兵器禁止条約が発効し、支持と参加が広がり続けている(批准66カ国、署名86カ国)。禁止条約の第1回締約国会議(6月21~23日、ウィーン)は、政治宣言「核兵器のない世界への私たちの誓約」(「ウィーン宣言」)を満場一致で採択し、「核兵器のない世界」に向けて希望ある力強いメッセージを発した。宣言は「核抑止論は、核兵器が実際に使用されるという脅威、すなわち無数の生命、社会、国家を破壊し、地球規模の破滅的な結果をもたらす危険性に基づいており、その誤りをこれまで以上に浮き彫りにしている」とのべ、「核抑止力」を厳しく批判した。採択された行動計画では、被爆者や核実験被害者への支援や核保有国の参加手順をはじめ条約を履行するための具体化もおこなわれた。禁止条約が国際法として確立し、世界の多数の国々がこれを支持していることは、もはや動かせない現実である。禁止条約を力に、市民社会と諸国政府との共同をさらに発展させるならば、「核兵器のない世界」への展望をきりひらくことは可能である。

 核大国のロシアが自国の犠牲をかえりみず、「核部隊に特別警戒態勢」を命じるなど核兵器による威嚇を公然とおこなったことは、核兵器が「核使用を抑止する」という「核抑止力」論が、もはや成り立たないことを示した。「核抑止力」なるものが、核の威嚇のもとに他国を侵略し、支配するための手段であることも明白となった。「核抑止力」は核兵器を使用して、無数の人々の命を奪い、都市と環境を破壊し、破滅的な結末をもたらすことを前提としたものである。人類を破滅のふちに追いやる元凶である「核抑止力」論をいまこそのりこえるときである。

 第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議がニューヨークで開かれている(8月1日~26日)。米ロ英仏中の核五大国が参加するこの会議が、核使用の危険を抑え、「核兵器のない世界」への展望を開くものとなることを強く求める。NPTは核軍備撤廃についての交渉を行う義務を定め(第6条)、再検討会議では自国核兵器の完全廃絶の「明確な約束」、「核兵器のない世界」の実現やそのための「枠組み」づくりの努力、中東非核兵器地帯の創設などが合意されてきた。しかし、核兵器国はこれらの実行に背を向けるばかりか、核兵器の「近代化」や核使用政策の強化をすすめている。核兵器国がこの不誠実な態度をあらため、条約の義務とこれまでの合意を確認し、これらを誠実に実行するよう強く求める。核兵器禁止条約は、NPT第6条実施を前進させるものであり、相互に補完しあうものである。

 日本には唯一の戦争被爆国にふさわしい役割の発揮が強く求められている。しかし、日本政府はアメリカの「核の傘」への依存を深め、核兵器禁止条約に反対するなど、国民の願いにも、世界の流れにも背を向けている。「核共有」の議論を求める動きも重大である。これらは、北東アジアにおける核対核の悪循環を加速させるだけである。日本政府に対し、「核抑止力」論から脱却し、核兵器禁止条約への支持、参加を表明することを要求する。

 ロシアのウクライナ侵略は明白な国連憲章違反である。我々は、ロシア軍の撤退と原発への攻撃・占拠を含む一切の軍事行動をただちに停止するよう要求する。国際社会は、国連憲章という共通のルールにもとづく世界秩序の回復、強化で結束すべきである。ロシアに対する態度の違いはあっても、締約国会議が一致して「あらゆる核兵器の威嚇を非難」したことは重要である。我々はあらゆる紛争の外交的解決を求める。北朝鮮の核・ミサイル開発問題や中国の南シナ海や東シナ海における力による現状変更も、軍事力による対抗ではなく、国際法にもとづく対話と交渉によって対処すべきである。

 ウクライナ侵略を機に、軍事同盟の強化・拡大、さらなる軍備拡大をすすめようとする動きに断固として反対する。NATOが首脳会議(6月29日、マドリード)で、新たな「戦略概念」を採択し、核軍事同盟としての強化、即応部隊の増強などをすすめ、アジア太平洋地域でもアメリカが、二国間、多国間の軍事協力を拡大しようとしていることは重大である。憲法改定、大軍拡、「敵基地攻撃能力」の保有など、日米軍事同盟のもとでの「戦争する国」づくりに反対する。日本国民の運動が果たすべき役割は重要である。

 ジェンダーの視点が核軍縮プロセスにおいても貫かれるべきである。核兵器使用の女性に対する過度に大きな影響、軍縮交渉における女性比率の低さは、この課題を急務としている。反核平和運動においても、この視点がいっそう重視されなければならない。戦争や軍拡に浪費される資源を気候危機の打開、貧困と格差の解消、人権と人間の尊厳を守るために振り向けさせることも急務である。「核兵器のない平和で公正な世界」の実現がいまこそ求められている。

 今後の帰趨(きすう)を決するのは諸国民の世論と運動である。我々は以下の行動に立ち上がるようよびかける。

 ――被爆者、核実験被害者の証言や原爆パネル展などヒロシマ・ナガサキの被爆の実相、核兵器使用の非人道的な結末を普及する活動を内外に広げ、核兵器の使用とその威嚇を許さない世論を構築しよう。国連と各国政府が、これらの活動を推進、支援するよう求めよう。

 ――核兵器禁止条約への支持・参加の促進をはじめ、核兵器廃絶をめざす世論を発展させよう。とりわけ核保有国や「核の傘」に依存する国々において、自国の条約参加を求める運動を強めよう。

 ――核兵器廃絶を共通の要求とする国際共同行動「平和の波」行動(2022年8月4日~9日)を成功させよう。

 ――第77回国連総会、NPT再検討プロセス、核兵器禁止条約締約国会議などを節目に、諸国政府と市民社会の共同を発展させよう。

 ――軍事費の削減、外国軍事基地の撤去、軍事同盟の解消、枯葉剤など戦争被害者への補償・支援と被害の根絶、平和教育の推進など、反戦平和の諸課題にもとづく運動との共同を発展させよう。

 ――「核兵器のない世界」を求める運動を、くらしと命、人権を守り、原発ゼロ、気候危機の打開、ジェンダー平等、自由と民主主義を求める運動など、あらゆる階層、世代の人々の広範な運動と連帯してさらに発展させよう。

 我々は、被爆者とともに、そして未来を担う若い世代とともに、これらの行動の先頭に立つ決意を表明する。

ノーモア・ヒロシマ ノーモア・ナガサキ ノーモア・ヒバクシャ 核兵器をなくせ!


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