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2022年8月7日(日)

「日本政府は二つの問題点をただせ」

NGO討論会 志位委員長の発言

 5日に広島市で開かれた核兵器廃絶NGO連絡会主催の討論会「核兵器のない世界に向けた日本の役割」での日本共産党の志位和夫委員長の発言と各党代表や識者の発言詳報を紹介します。


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(写真)発言する志位和夫委員長=5日、広島市中区

 私は、NPT(核不拡散条約)再検討会議の岸田文雄首相の演説を聞きまして、核兵器に対する日本政府の二つの問題がはっきり表れた、これをただす必要があると主張したいと思います。

 一つは、岸田首相が核兵器禁止条約について一言も触れなかったことです。

 6月に開催された禁止条約の第1回締約国会議は「ウィーン宣言」を採択して大きな成功をおさめましたが、この会議では米国の同盟国であるドイツ、ノルウェー、ベルギー、オランダ、オーストラリアがオブザーバーとして参加しました。これは禁止条約が無視しえない世界の現実であることを示したと思うんです。

 この重要な会議に唯一の戦争被爆国の政府が参加せず、NPT再検討会議での演説でも禁止条約に一言も触れない。これで「橋渡し」を名乗れるのかが問われると思います。私たち日本共産党は、日本政府に対して、「核抑止論」の呪縛から抜け出して、禁止条約に署名、批准することを強く求めます。

 もう一点は、核保有国に「核軍備縮小・撤廃のために誠実に交渉を行う」ことを義務づけたNPT第6条について、多くの国々がその重要性に言及する中で、岸田首相が一言も触れなかったということです。

 NPT第6条に基づいて、2000年の再検討会議では「自国核兵器の完全廃絶を明確な約束」、10年の再検討会議では「核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを確立するための特別な取り組みを行う」という全会一致の確認があります。

 日本政府が、真剣に「核兵器のない世界」を求めるというなら、自らも賛成したNPT再検討会議の一連の合意を再確認し、具体化、実行することを国際社会、とりわけ核保有国に求めるべきだと思います。

 (共産党としてどうやって核兵器のない世界を実現するのかという「カクワカ広島」共同代表の田中美穂さんの質問に対して)

 田中さんの質問はとてもしっかり受け止めなければならないものばかりだなと思って聞きました。どうやれば「核兵器のない世界」へ進めるのかということなんですが、私は「核抑止論」という考え方を乗り越えることがどうしても必要だと思います。

 「核抑止」というのは、いざというときには核兵器を使用すると、つまりいざというときには広島、長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわない、これが前提になった議論だと思うんですね。「ウィーン宣言」でも核抑止論は、「核兵器が実際に使用されるという脅威」に基づいており、「その誤りをこれまで以上に浮き彫りにした」とあります。実際に使用することが前提なんです。ですから核兵器の非人道性、これについてはみなさん、日本の政党のおそらく共通意識だと思うんですが、非人道性を批判するのだったら、「核抑止論」という議論とは両立しないと思うんですね。

 どうやって乗り越えるかの力ということでは、やはり草の根の運動だと思います。

 私は、17年の核兵器禁止条約の国連会議に2回参加しまして、藤森俊希さん、サーロー節子さん、被爆者の声でまさに条約をつくったと思います。被爆者を先頭にした世界の平和運動の長年の頑張りがつくった。第1回締約国会議のクメント議長は「この条約は被爆者の条約だ」とおっしゃっていますけど、そういう運動がつくってきたのです。それを世界中に広げていくことが「核兵器のない世界」をつくる一番の力になります。その運動を一緒にやっていきましょう。

■各党の発言

 立憲民主党の泉健太代表は、NPT再検討会議で岸田文雄首相の演説に関し、「核保有国と非保有国をつなぐわが国しかできない役割がある中で、演説で禁止条約に触れるべきだった」と指摘しました。

 自民党の宮沢博行衆院議員は、「通常戦力、防衛力の増強で均衡を勝ち得て、その安定のもとで核兵器削減へと進むのが重要だ」として、核廃絶のために軍拡が必要だと述べました。核兵器禁止条約について、核抑止に頼りながら条約に加盟すれば、「条約は有名無実化する」などと述べ、参加を否定しました。公明党の山口那津男代表は、条約参加に言及せず、第2回締約国会議のオブザーバー参加の環境整備をすると述べました。

 日本維新の会の藤田文武幹事長は、核共有について、「米国と作戦や意思決定を共有し、意思決定にかかわる戦略的な行動が求められている」と述べました。

 藤原帰一東京大名誉教授は、討論のまとめで、「核兵器の実戦使用の可能性が高まっている」と警鐘を鳴らし、「核の共有という愚かな話にがっかりした」と厳しく批判。「核兵器使用の現実の可能性がある中で、広島、長崎を繰り返してはならない」と述べました。


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