2022年8月6日(土)
ミャンマー国軍を守ってると感じる
日本政府 関係断って
在日ミャンマー人 ウィンチョウさん(57)
おかしな政治にはもっと声を
国軍によるクーデターから1年半がたつミャンマーでは、民主化を求める多くの国民が今も国軍によって命や家を奪われています。そうした国軍と強い関係を持ち続ける日本政府に対し、「ミャンマー人から見ると国軍を守っているように感じる。国軍に対してしっかりした態度を示すべきだ」と訴える在日ミャンマー人がいます。(小林圭子)
|
ウィンチョウさん(57)=東京都杉並区=は、1980年代のミャンマー(当時ビルマ)で民主化を求める学生運動に参加していました。軍による弾圧から逃れ、89年に来日。日本へ来てからも、日本の国会議員などにミャンマーの民主化のための支援を訴える活動を続けてきました。
何千人もの国民殺されてるのに
日本政府は、安倍晋三元首相の国葬への招待となる通報をミャンマーに送っています。「軍を呼ぶことになりありえない。安倍元首相も殺されたが、ミャンマーでは何千人もの民主化を求める国民が殺されている」と怒りをにじませます。
日本政府は先月、ミャンマー国軍から新たに留学生4人を防衛大学校などに受け入れました。「日本人がミャンマー人を殺していいよと教えているの?と思ってしまう。留学生を今すぐ帰すべきだ」と訴えます。
ミャンマーでは、民主活動家4人の死刑が先月末、クーデター以降初めて執行されました。国民の軍への反発は大きく、ウィンチョウさんは内戦がエスカレートすることを危惧しています。「内戦が大きくなれば、難民や死者が増える。国軍はいろんな村を襲い、家を焼き民衆を殺し、家畜を奪っていく。今はコメを作る時期なのに、作り手や家畜がいなくなれば、来年のコメはどうするのか」と心配します。
日本政府が、国軍の利益につながる既存のODA(政府開発援助)を継続していることに「今やるべきは国軍の政治を終わらせること。その後、経済はいくらでも立て直しできる」と強調します。
いまのままでは信用が失われる
ミャンマーでは、在ミャンマー日本大使館前などで日本政府へ国軍との関係を断つことを求め、若者たちがデモを続けているといいます。しかし、国軍への態度が変わらない日本政府について、「『ウィンチョウの好きな日本は何をやっているの』と言われ、すごくさびしい。今のままでは、ミャンマーの若者の日本への信用が失われていく」。
ミャンマーの民主化後の2020年、人生で初めて投票したというウィンチョウさん。日本の選挙での投票率の低さを悲しみます。
「政府がおかしなことをしていたらそれを変えるのが選挙。自分の1票がどれだけ重みがあるか。私は初めての投票で涙が出た。私たちは民主主義を求めてずっと運動してきた。民主主義の権利を持つ日本人は、もっと政治に関心を持ち、声を上げてほしい」
ミャンマークーデターの被害 同国の人口は5380万人(2021年、国連統計)。クーデター以降の国内避難民は約77万人、国外難民は約4万人(7月4日時点、国連難民高等弁務官事務所)、現地の人権団体によると死者は2142人(8月1日時点)に上ります。
■民主化運動の歴史
1988年 全国的な民主化要求デモにより政権が崩壊。国軍がデモを鎮圧し政権を掌握。
90年 総選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝。政府は政権移譲を拒否し弾圧強化。
2015年 総選挙でNLDが大勝。翌年、NLDによる新政権が発足。
20年11月 総選挙でNLDが再び大勝。
21年2月 国軍がクーデター。
(外務省HPなどから作成)