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2022年8月6日(土)

きょうの潮流

 「あの子は、77年前の私です。生きとりました」。原爆が落とされた直後の広島を記録したフィルム。そこに兄に背負われ、頭から左ほおにかけて包帯を巻いた3歳の子が映っていました▼今年80歳になる竹本秀雄さんです。あの日、爆心地から1キロの自宅で被爆。家の下敷きになっていたところを兄に助けられ病院での治療の行き帰りに撮られたものとみられます。一命はとりとめたものの左ほおの傷は骨がみえるほど深く、傷痕はケロイドに▼姉の一人は全身に大やけどを負い亡くなりました。被爆した家族はその後も苦しくつらい生活が続き、いまわしい過去は封印してきました。「あまりにも起きたことが大きすぎて…」▼先月10日、東広島で開かれた原爆展。竹本さんは初めて公の場で自身の被爆体験を明かしました。涙でつまりながらの77年越しの告白。「やっと呪縛が解け、肩の荷がおりた感じです」▼これまで口を閉ざしてきた被爆の人生。開かせたのは、核兵器をなくそうと運動する身近な友人たちの励ましと、ロシアによるウクライナ侵略でした。「やっぱり戦争はいけない。泣くのは市民です。あのときの恐怖がよみがえるいま、これからも証言を続けていこうと心に決めています」▼核なき世界の道を切り開いてきた被爆者たちの訴え。それを伝え語り継いでいくことは、ますます重要に。竹本さんは、未来を生きる子どもたちに語りかけます。「やさしい人になってください」。それが戦争をなくす礎になることを願って。


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