2022年8月3日(水)
主張
最賃の目安答申
物価高騰のなか到底足りない
最低賃金の2022年度の引き上げの目安額が答申されました。厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会で議論されていたもので、最低賃金の高いA~Bランク地域で31円増、安いC~Dランク地域で30円増となりました。過去最高の増額ですが、求められる水準にはまだまだ届きません。
これから都道府県ごとの審議会の議論を経てそれぞれの引き上げ額が決定されます。10月から改定される予定です。物価高騰が国民の生活を苦しめるもと、さらなる最賃引き上げが必要です。その実現によって経済の底上げをはかるべきです。
早急な引き上げ不可欠
岸田文雄政権は、6月に決定した骨太の方針に「できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000円以上」となることを目指すと明記しました。しかし、今回の目安通り3・3%増額で改定されても全国平均で時給961円にとどまり、目標達成には、なお数年かかります。
最低賃金が地域別になっている矛盾も深刻です。目安通りの改定であれば、Aランクの東京都は1041円から1072円になるのに対し、Dランクで最安の沖縄県と高知県は820円から850円で地域間の格差は解消されません。
全労連の最低生計費調査では、全国の都市と地方の生計費に差はありません。どこでも時給1500円以上が必要です。最賃の格差が地域間の経済格差をつくる原因となるのは許されません。
物価高騰は最賃引き上げを急がなければならない大きな要因です。経済財政諮問会議に提出された内閣府の資料によると、22年度の物価の予想上昇率は、2・6%です。物価の上昇を受け、実質賃金は4月にマイナス1・7%、5月にマイナス1・8%です。賃金が物価の上昇に追い付いていません。最低賃金の上昇分も、ほとんどが相殺されます。物価上昇を超える引き上げが必要です。
内閣府の景気ウオッチャー調査(6月調査)によると、「ほとんどの仕入れ商材で、ひっきりなしに値上げがある。スーパーに行っても食品、日用品の値上げは当たり前で、これでは買い物や出費を控えるようになるのは当然である」(北関東=一般レストラン)、「客単価、来客数の減少が続いている。光熱費の料金引き上げに加え食品の値上げが相次ぎ、明らかに家計への影響があり、消費の引き締めが起きている」(東海=スーパー)との声があがっています。
秋以降はさらに多くの値上げが指摘されているだけに最賃大幅引き上げは待ったなしです。
カリフォルニア大学バークレー校のスティーブン・ボーゲル教授(日本政治・経済)は、「日本政府は直ちに最低賃金を引き上げるべきだ。そうすれば、支出に回す可能性が高い人々の手にお金が渡るし、収入が最も少ない層の所得を引き上げられる」(「日経」7月27日付)とのべています。
成長につなげるために
大企業の利益ばかりを優先する政治によって、日本経済は、賃下げとリストラで需要が増えず、「賃金の上がらない国」「成長しない国」になってしまいました。中小企業支援と一体で、一刻も早く、全国一律で最低賃金を1500円に引き上げるべきです。