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2022年8月2日(火)

主張

高額な役員報酬

賃上げと公正な税制を今こそ

 上場企業の2022年3月期(21年度)決算で1億円以上の報酬を得た役員が大幅に増え、過去最高を更新しました。報酬総額は前年の1・3倍です。コロナ禍やロシアのウクライナ侵略にともなう経済の混乱のなかでも大企業は大もうけをあげています。しかし役員報酬や株主への配当金が増える一方、賃金はほとんど上がりません。実質賃金は急激な物価高で低下しています。賃上げや公正な税制の実現で格差をただす改革が急務です。

アベノミクスで過去最高

 民間信用調査会社、東京商工リサーチが7月22日時点でまとめたところによると、22年3月期決算で開示された1億円以上の役員報酬は287社、663人、総額1453億2800万円でした。前年と比べると、34社、119人増え、報酬総額は33%増となりました。

 「円安などを背景に業績が好転した企業が増えたほか、ストックオプションや株式報酬などの非金銭報酬もウエイトが高まり、人数・社数とも大幅に増加した」と分析しています。

 1億円以上の役員報酬と従業員給与の格差は平均で25倍です。差が最も大きかったのはトヨタ自動車のジェームス・カフナー取締役でした。同社の平均給与の105・7倍にあたる9億600万円の報酬を受け取っています。

 大企業の業績好転の要因となっている円安は「異次元の金融緩和」で加速しています。安倍晋三政権以来の経済政策「アベノミクス」の一環として続けられている政策です。輸出や海外事業に有利に働き、大企業は軒並み過去最高の利益をあげています。

 労働者の名目賃金は、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると21年度は前年度比わずか0・7%増です。実質賃金は0・5%増で、今年4月以降は物価上昇のためマイナスが続いています。

 大企業は増やした利益を内部留保としてため込み、賃上げに回そうとしません。アベノミクスで増えた内部留保に課税して大企業に賃上げを促すとともに、税収を財源に中小企業の賃上げを支援するという日本共産党の提案がますます重要になっています。

 高額役員報酬が増える一因と指摘されているストックオプションは自社株を一定期間、あらかじめ定められた価格で購入できる権利です。株価が上がるほど自社株を安く取得でき、それを市場で売却すれば値上がり益を得ることができるので、ストックオプションを与えられた役員は株価上昇に懸命となります。

富裕層・大企業に負担を

 アベノミクスは日銀や公的年金積立金を株式市場に投入して株価をつり上げています。これがストックオプションの役員報酬を増加させています。

 岸田文雄首相はアベノミクスを継承するとともに、政権に就く前、公約に掲げていた「金融所得課税の強化」は無期限に先送りしてしまいました。広がる一方の格差をただすためには、富裕層や大企業に、能力に応じて税を負担させる「応能負担の原則」による税制改革が欠かせません。

 岸田政権は「新しい資本主義」を掲げながら、経済や社会の不公正に手をつけようとしません。政治の転換が必要です。


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