しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年8月1日(月)

主張

半導体大企業補助

安保名目で法外な支援やめよ

 経済産業省が26日、半導体大手キオクシア(旧東芝メモリ)などによる国内半導体工場の建設に最大929億円の補助金を出すと発表しました。台湾積体電路製造(TSMC)とソニーの子会社が熊本県で建設する工場に最大4760億円の補助を決定したのに続く第2弾です。

 コロナ禍で苦しむ中小企業をよそにした、特定企業への法外な支援です。「経済安全保障」を名目に、特定の企業、しかも資金が潤沢な大企業に巨額の税金を投入することは、公正であるべき経済政策をゆがめるものです。

年間中小企業予算の3倍

 補助の対象となるのはキオクシアと米ウエスタンデジタルが共同で計画する三重県四日市工場の施設です。最先端の「3次元フラッシュメモリー」を生産します。投資額の約3分の1を国が支援するといいます。

 岸田文雄政権は昨年の臨時国会で、半導体製造拠点を国内に建設する企業に、最大で経費の2分の1を補助する法律を成立させました。財源として国が6170億円の基金を設けました。TSMCとキオクシアを中心とする工場関係だけで基金の92%を支出することになります。

 2022年度の政府の中小企業対策費は1713億円です。その3倍を超える国費をわずか2件の企業補助金に充てます。異常な予算の使い方です。

 電機や自動車に不可欠な半導体は各国で不足が問題になり、政府は国内生産の必要性を強調しています。しかし半導体の確保と安定的な供給はユーザー企業などが責任を負うべきです。電機、自動車大企業は数十兆円もの内部留保を抱え、十分な資金を持っています。効果が不明な巨額補助金は国民の理解を得られません。

 そもそも、米国の圧力に屈して日本の半導体産業を衰退させたのは自民党政権です。日本の半導体の世界シェアは1980年代に5割を超えていましたが、今や10%程度です。

 86年に締結した日米半導体協定は米国の圧力で日本市場での外資系製品のシェア引き上げなど不利な競争条件を取り決めました。政府はその後、国家プロジェクトを立ち上げましたが半導体産業は結局、落ち込んでいきました。米国いいなりの経済政策を反省せずに大企業支援を重ねても失敗を繰り返すことになりかねません。

 「経済安保」を名目とした大企業支援は今年の通常国会で成立させられた経済安保推進法でさらに加速させられています。軍民両用技術に関しては防衛装備庁が所管する支援制度で年間100億円程度の予算が支出されています。

経済ゆがめる軍事対決

 29日、日米外務・経済担当閣僚の協議体「経済版2+2」の初会合がワシントンで開かれ、中国に対抗する経済戦略について話し合われました。米国は中国を念頭に半導体産業への支援を強めており、半導体企業支援は日米一体となった対中戦略の一環です。

 中国の覇権主義的行動や知的財産権の侵害問題には事実に基づく批判と外交的な対応が必要です。軍事対軍事の対決を強め、経済や科学技術をその中に組み込むことは解決の妨げです。特定半導体企業への国費の大盤振る舞いも許されません。


pageup