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2022年7月31日(日)

主張

組織委元理事捜査

東京五輪疑惑を徹底解明せよ

 東京地検特捜部が東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事に対し、受託収賄の容疑で強制捜査に乗り出しました。高橋元理事は、大会スポンサーだった紳士服大手AOKIホールディングス側から資金提供を受け、その見返りに便宜を図っていた疑いが持たれています。東京五輪には、国の予算をはじめ巨額の資金が投じられています。その中で利権の構造がつくられ、不正の温床になっていたとすれば、極めて深刻です。東京五輪では招致過程でのカネにまつわる疑惑も消えていません。一連の問題を洗いざらい明らかにする時です。

電通出身として影響力は

 AOKI側は2017~21年に、高橋元理事が代表を務める会社にコンサルタント料名目で計約4500万円を提供したとされます。AOKIは18年10月に、大会スポンサーに選定されました。大会エンブレムが入ったスーツやジャケットなど公式ライセンス商品の販売を許可され、3万着以上を販売しました。大会審判団のユニホーム製作などにも関わりました。

 特捜部は、資金提供が五輪事業参入などをめぐる便宜供与の見返りとみています。組織委理事は「みなし公務員」とされています。理事の職務に関して金品を受領すると刑法の収賄罪に問われます。

 高橋元理事は広告大手「電通」の専務でした。同社顧問を退職後、14年に組織委理事に就任しました。今度の事件では、電通本社も家宅捜索の対象になりました。同社は、組織委に多数の社員を出向させました。公式ライセンス商品の審査事務などを担当する部局には、電通出向者が多かったとされます。同社がどのように関与していたのかも究明が必要です。

 この件以外にも不正な動きや不透明な金の流れはなかったのか、解明が求められます。組織委は6月に解散し、大会経費に関する契約書類などの重要文書は開示されていません。いまこそ明らかにされなければなりません。

 高橋元理事は東京五輪招致をめぐる金銭疑惑でも名前が浮上しました。ロイター通信は20年3月、高橋元理事が招致決定の13年まで招致委員会から約820万ドル(約9億円)を受け取り、国際オリンピック委員会(IOC)の委員らにロビー活動をしたと報道しました。同氏は規定違反でないとしつつ、贈り物をしたことを認めました。招致委がシンガポールの会社にコンサルタント料名目で振り込んだ資金がIOC関係者に流れた疑惑はフランスの司法当局が捜査をしています。事情聴取された日本オリンピック委員会の竹田恒和前会長と高橋元理事は親しい関係とされます。招致疑惑の解明も進めるべきです。

 数々の疑惑を置き去りにして30年札幌冬季五輪招致を推進することに国民の理解は得られません。

商業主義をただす機会に

 疑惑をうむ背景にあるのは五輪自体の巨大化・商業化のひずみです。東京大会の総経費は1兆4000億円超にのぼりました。放送権料などスポンサー企業の利害で五輪の運営がゆがめられる弊害は長年指摘されています。アスリートや競技よりもビジネスチャンスの拡大を狙う企業のための五輪であってはなりません。疑惑解明とともに五輪開催のあり方も検討することが欠かせません。


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