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2022年7月30日(土)

きょうの潮流

 異文化との出会い、人間のさまざまな営みや生き方、そして情念。この場所で、静かにおしよせる深い感動に何度つつまれたか▼世界の名作を紹介してきた東京・神保町の「岩波ホール」が幕を下ろしました。開館から半世紀余り、66の国と地域の274作品を上映。インドのサタジット・レイ監督による「大樹のうた」を皮切りに、イギリスの紀行作家ブルース・チャトウィンの足跡をたどる作品まで。他では見られない映画にこだわってきました▼ミニシアターの先駆けとして映画文化の普及に貢献してきました。映画仲間を募り、世界の埋もれた名画を紹介しようというエキプ・ド・シネマ運動を展開。設立時に総支配人を務めた高野悦子さんを中心に「心にひびく映画」を届け続けました▼女性の映画監督をめざし、フランスに留学した高野さんは興行の世界に創造をとり入れました。「あすへの生きる意欲、力をおこさせるものが真の娯楽である」と▼閉館はコロナの影響による観客減も大きいが、根っこにはこうした公共性の高い文化の発信地にたいする支援の貧弱さがあります。映画監督の想田和弘さんは映画館を社会的に位置づけ守るべき存在だという考えが日本の政治や行政にほとんど根づいていないと訴えます▼関西で長くミニシアター文化をけん引してきた「テアトル梅田」も9月末で閉じます。持続にも創造の精神が必要といっていた高野さん。多様性や創造を欠いた社会になってしまったら、人の心も貧しくなるだけです。


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