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2022年7月22日(金)

主張

東京五輪の総括

説明責任を放棄し自画自賛か

 東京五輪開会式から23日で1年となります。新型コロナがまん延した昨夏、強行された東京五輪・パラリンピック大会を総括した組織委員会の公式報告書が6月末、公表されました。

 しかし、報告書は説明責任を放棄した空疎な内容です。大会のあり方や組織委員会がかかわる不祥事にたいする本質的な反省や掘り下げもなく、自画自賛しているのが特徴です。

「森発言」も肯定的に

 今回、歴史的な出来事となった大会の1年延期にたいし、どこでどんな判断があったのか一切の記述がないことに違和感を禁じえません。感染拡大を危惧し、異論が相次ぐなかでの開催については、「スポーツの原点をより際立たせ、さらにその価値を高めた」と記しました。第5波が襲い、大会の最中に都内で1日5000人の感染拡大となり、命が犠牲になったことへの反省はありません。

 森喜朗前会長の女性蔑視発言や式典担当者の人権感覚を問われる発言は「組織委員会がジェンダー平等や多様性と調和の重要さを認識する契機となった」としています。同時にみずからの責任を棚上げし「日本社会全体の議論を活性化させることになった」と肯定的に描く記述には目を疑いました。

 「復興五輪」に対しては、取り組みを列挙し、「被災地の風評の払拭(ふっしょく)や風化防止、そして更なる発展の後押しに貢献」としています。しかし、6月末に政府が公表した五輪報告書の被災地アンケートでは「大会が復興に寄与した」との回答は3割にすぎず、7割が「どちらともいえない」「そうは思わない」などでした。被災地の思いとかけ離れた、独りよがりの総括といわねばなりません。

 大会経費は総額1兆4238億円で、招致段階の試算7340億円から倍増しました。なぜ膨れたのか。招致段階では国際オリンピック委員会(IOC)が求める都市比較のため、「基礎的かつ共通部分だけを抜き出した積算」であり、大会7年前のため「環境の変化に対応するものでない」こと、警備対策、公共交通対策など「行政的な費用は計上されていなかった」などを理由に挙げています。実態に即した試算ではなかったことを告白したものです。これは2030年札幌冬季五輪招致にとっても見逃せない点です。

 組織委の報告書にはメディアから「お粗末で身勝手な内容」(「朝日」)、「国民の感覚とずれている」(「毎日」)と批判が相次いでいます。

 五輪の実態解明のための検証作業は困難になっています。組織委員会は6月末に解散し、経費に関する契約書など重要文書は清算人が10年間保管するものの、開示の義務がありません。20日、五輪組織委元理事が代表を務める会社が、大会スポンサーから4500万円の資金提供を受けていた疑惑が報じられました。解明のためにも文書開示は必須です。

第三者や市民の視点で

 大会には多くの公金が投じられました。IOCの独善的な体質や大会の肥大化など、五輪の今後にかかわる問題の解明も待たれます。国民、メディアなどさまざまな立場からの検証は、開催地の責任でもあります。すべての文書を開示させ、第三者や市民の目での深い総括こそ求められます。


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