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2022年7月21日(木)

「やれるところまではできた」伊藤詩織さん会見

元TBS支局長賠償判決の確定受け

性被害者が沈黙強いられてはいけない

 ジャーナリスト伊藤詩織さんの性被害を認定し、加害者の山口敬之・元TBS支局長に約330万円の損害賠償を命じた今年1月の東京高裁判決が確定したことを受け、伊藤さんが20日、都内で弁護団とともに記者会見しました。「やれるところまではできた」と裁判を振り返る一方、「性被害の当事者が沈黙を強いられることが許されてはいけない」とも述べ、「当事者以外の人にも考えてほしい」と呼びかけました。


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(写真)会見する伊藤詩織さん=20日、都内

 高裁判決は元支局長が「同意がないのに性行為に及んだ」と認定。他方で、著書などで元支局長の名誉を毀損(きそん)したとして伊藤さんに55万円の支払いも命じていました。最高裁は7日付で、双方の上告を退けました。

どれだけの声が…

 この日の会見で伊藤さんは「性被害を公に語るということは、周囲との間に溝ができることでもあった」と振り返りました。それでも実名での公開に踏み切った目的について「日本の刑法では同意のない性交が『レイプではない』ことになる。ここに疑問を感じ、少しでも扉を開けられたらという気持ちで(被害を)公開した」と述べました。

 その後、#MeToo運動の広がりなどもあり、「従来は届くと思わなかった被害者の声が少しずつ届くようになったと感じる」と感慨を語りました。

 しかし、「#MeToo運動が5年続く今も新たな被害のストーリーがどんどん出てくる。どれだけの声がかき消されてきたのか。当事者だけでは何ともできないとも思う」とも述べました。

 元支局長の訴えに基づいて、伊藤さん自身が警察の事情聴取も受けたといいます。

 「まさか自分が当事者になって、ここまでされるのかと驚いた。これが当たり前になったら、誰も自分に起きた被害を語れなくなってしまう」

起き上がれぬ日も

 高裁判決が伊藤さんに賠償金支払いを命じたことについても、弁護団から「被害者が被害を語ることに大きな躊躇(ちゅうちょ)を感じることを危惧する。この判決を一般化してはならない」(山口元一弁護士)との批判が出ました。

 「性被害を抱えて生きる多くの人に伝えたいことは」との質問には「被害から7年がたつ私自身、今でも『今日は大丈夫』という日と、起き上がれない日とを繰り返している」と打ち明けました。

 「でもこの数年、素直に自分の気持ちにあらがわず向き合うことが少しずつできるようになった。大変だし時間はかかるが、自分に正直に、どんなことを言われても自分の真実を信じてほしい」

答えを探すために

 「性被害の当事者として声を上げることは今日で最後にしたい」とも語りました。

 最近訪れたウクライナで、性暴力に関する取材をしたといいます。

 「当事者にならなかったら自分も目を向けなかったかもしれない。報じられる側に立ったのはいい経験になったが、今後は報じる側に専念したい。女性の声を伝えるため、自分で答えられなかった答えを探すためにも、取材を続けていく」


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