しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年7月21日(木)

主張

途上国の経済危機

債務問題解決へ国際協力を

 コロナ禍とロシアのウクライナ侵略による経済危機が、発展途上国・新興国の多くで深刻化しています。世界的な格差と貧困を拡大し、新たな紛争の火種となりかねません。対策を急ぐ必要があります。

暮らしを壊す高インフレ

 国際通貨基金(IMF)は新興国・途上国の経済成長率が2021年の6・8%から22年には3・8%に低下すると予測しています。多くの国でインフレが激化し、国民が食料、燃料を十分手に入れられない状況が広がっています。

 コロナ禍のもとで原油や穀物をはじめ1次産品の価格はウクライナ侵略以前から上昇していました。戦争は国際市場の混乱を招き、物価をさらに引き上げました。

 そのうえ米国や欧州が金融を引き締めつつあることが途上国にインフレ圧力を強めています。世界のマネーは高い金利を求めて欧米に流れ込みます。途上国にとってはマネーの流出、通貨安、物価高とドル建て債務の膨張という悪循環が加速します。

 物価上昇率が50%にも達したスリランカでは、生活物資を入手できなくなった国民が連日デモを繰り返し大統領が13日に国外に脱出して辞任する事態になりました。

 大統領の一族支配が続いた同国では、中国の支援を受けた巨額のインフラ投資で債務がかさみ、17年には債務返済と引き換えに南部のハンバントタ港の運営権を99年間中国に貸与するまでに追い詰められていました。中国の開発金融については融資条件の不透明さが批判されています。

 コロナ禍はスリランカの主要産業である海外からの観光に大きな打撃を与え、外貨不足に陥っていました。政府債務残高は国内総生産(GDP)比で100%を超え、通貨ルピーが今年に入って暴落したことで、極端なインフレが起きていました。

 スリランカの問題は15日にインドネシアで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも議論されました。議長を務めた同国のムルヤニ財務相は、世界的なインフレ、商品価格の上昇、ウクライナでの戦争が途上国の債務負担をいっそう悪化させると警告しました。世界銀行によると、中低所得国が抱える対外債務は過去最大の約9兆3000億ドル(約1280兆円)にのぼります。

 G20は20年に最貧国の債務返済の一部猶予に合意しました。当時から、救済の対象が狭いなどの不十分さを指摘されていました。それすら実行が遅れています。国家財政が危うい状況では国民の暮らしに必要な予算を組むことができません。対象を中低所得国に広げることや債務の帳消しを含め、思い切った措置が必要です。

自立と持続可能な発展へ

 途上国の危機が深まるなかで主要7カ国(G7)と中国が支援をめぐって対立を深めています。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」に基づいてアジア、アフリカで投資を増やしています。G7は6月の首脳会議で、中国への対抗を念頭に、途上国に対する新たなインフラ支援の枠組みを発表しました。米国が最大の資金拠出国です。

 対立しあうG7と中国が自らの勢力拡大に支援を利用することは許されません。途上国の自立と持続可能な発展に向けて国際社会が協力しあうことが求められます。


pageup