2022年7月19日(火)
公明党が“独自”の自衛隊明記案
「戦力不保持」 9条2項空文化
公明党は参院選公約で、憲法への自衛隊明記について「検討を進めていく」と前向きな姿勢を示していました。山口那津男代表は選挙の結果を受けて「自衛隊は大部分の国民が容認している」(11日)などとして、自衛隊の憲法明記について慎重ともとれる発言をしていますが、この間、公明党は“独自”の自衛隊明記案を提起しています。
憲法審で提起
同党の北側一雄副代表は5月19日の衆院憲法審査会で、自衛隊法7条が「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する」としているとし、「内閣総理大臣が内閣を代表して指揮監督権を有する、これを憲法価値に高めていくという意味は十分理解できる」と強調。「その位置づけは、恐らく、憲法の72条とか73条に内閣総理大臣の権限とか内閣の職務について規定されている。ここに(自衛隊を)書き込んでいくことも考えられる」と述べています。北側氏は「私個人で思っている」などと述べましたが、党の副代表が憲法審査会で提起した意味は大きく、憲法への自衛隊明記で、改憲原案作成の動きに公明党も加わっていく流れです。
憲法72条は、「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する」と規定。73条は、法律の誠実な執行や外交関係の処理など、内閣の行う「事務」(1~7号)を規定しています。
内閣総理大臣の指揮権という角度から自衛隊を憲法72条ないし73条に明記するという「提案」ですが、9条2項の「戦力不保持」規定と自衛隊の存在との矛盾=違憲性を、自衛隊を憲法上の存在に格上げすることで「解消」する点で、9条への自衛隊明記案と本質的な違いはありません。
また、日本維新の会が5月18日に示した案で、「第九条の二 前条(九条)の範囲内で法律の定めるところにより、行政各部の一として自衛のための実力組織として自衛隊を保持する」としています。ここでも内閣総理大臣の指揮のもとに自衛隊を置くという点がポイントの一つとなっており、公明党案と類似しています。
制限は不明確
他方で、9条2項の「戦力不保持」規定と72条または73条に明記される「自衛隊」との関係はどうなるのか、自衛隊の権限の範囲はどうなるのかなどはこれだけでは明確にならず、「最大の実力組織」に対する憲法の制限は不明確です。これらの点は当然、条文に書き込まれざるを得ません。そうなると、9条に自衛隊を明記することとやはり違いはないことになります。
いずれにしても、実体的に「戦力」である自衛隊を憲法に書き込むことで、9条2項の「戦力不保持」規定が空文化していくことは間違いありません。
公明党は9条2項の空文化にまで手を染めるのかが厳しく問われることになっていきます。(中祖寅一)








