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2022年7月16日(土)

主張

東電株主訴訟判決

原発事故招いた無責任を断罪

 東京電力福島第1原発事故で会社に損害を与えたとして東電株主が旧経営陣に賠償を求めた株主代表訴訟で、東京地裁は13日、勝俣恒久元会長ら4人に対し、津波対策を怠ったとして13兆3210億円の支払いを命じました。原発事故で経営者責任を明確に認めた判決は、二度と事故を起こしてはならないという強い警告です。

経営陣に安全意識が欠如

 判決は、原発の過酷事故は「周辺住民に重大な危害を及ぼし、環境を汚染することはもとより、国土の広範な地域や国民全体にも甚大な被害を及ぼし、地域の社会的・経済的コミュニティーの崩壊や喪失を生じ、ひいてはわが国そのものの崩壊につながりかねない」と指摘し、事故を防止すべき原子力事業者の「社会的、公益的義務」の重さを強調しました。

 東電は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した地震予測「長期評価」に基づき津波の試算をし、08年には、福島第1原発に最大15・7メートルの津波が来るとの結果を得ていました。判決は、「長期評価」は「相応の科学的信頼性を有する知見」であり、東電の試算も「信頼のおけるもの」と認定しました。当時の経営陣が「長期評価」の信頼性を認めず津波対策を講じなかったことは「著しく不合理で許されるものではない」と指弾しました。

 さらに、原子炉建屋の水密化などを速やかに行っていれば、「重大事故に至ることを避けられた可能性は十分にあった」としました。

 東電は、当時の原子力安全・保安院から「長期評価」に基づく津波試算を求められていたのに、「最大15・7メートル」という試算結果を明らかにしたのは東日本大震災発生直前の11年3月7日でした。判決は、こうした姿勢を「都合の悪い部分を無視ないし顕在化しないよう腐心してきた」「安全意識や責任感が根本的に欠如していたと言わざるを得ない」と断じました。

 福島原発事故の避難住民らが国に損害賠償を求めた訴訟で、6月17日の最高裁判決は国の責任を認めませんでした。しかし、同判決に付記された反対意見は、事業者は高度の安全性確保義務を負っているとした上で、津波の予見可能性と水密化などの対策による事故回避の可能性を認めました。国が規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠き違法だという判断です。規制機関が「事実上存在しなかったというに等しい」とも論じています。

 原発事故の危険性を棚上げし、取り得る対策をとらずに福島原発事故を招いた東京電力と国は責任を免れることはできません。

再エネ推進への転換こそ

 岸田文雄首相は、福島原発事故に対する責任を認めないまま、骨太方針で原発の最大限活用を掲げました。14日の記者会見では、冬の電力需給ひっ迫が懸念されるとして、原発9基を稼働させると表明しました。事故への反省もなく原発再稼働に突き進むことは、国民の安全に対してあまりにも無責任で危険な道です。

 電力の安定供給のためにも、自給率向上のためにも、原発頼みのエネルギー政策を根本から改め、国産・地産エネルギーである再生可能エネルギーこそ最大限活用すべきです。即時原発ゼロ、石炭火力からの計画的撤退を進め、再エネ100%をめざしましょう。


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