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2022年6月29日(水)

参院選 大軍拡の正体

防衛省研究開発費 急増

科研費抜き過去最大

 防衛省の研究開発費が、今年度予算で、大学・研究機関などによる主要な学術研究の資金の一つ「科学研究費助成事業」(科研費)を抜き、過去最大の2911億円に急増しました。自民党内には、5年以内に1兆円規模まで大幅に増やそうとする動きがあります。


 岸田文雄政権で初めての今年度予算では、防衛省の研究開発費が昨年度の2116億円から1・4倍近くに激増しました。敵の射程圏外から攻撃する能力強化に向けたミサイル開発(393億円)、次期戦闘機の開発(858億円)、敵のドローン兵器を無力化する高出力マイクロ波照射技術の実証(72億円)などが計上されています。

 防衛省の研究開発費の過去10年の推移をみると、当初は緩やかな増加傾向でしたが、この数年で一気に増加。今年度は、2012年度(1301億円)の2・2倍以上に膨らんでいます。(グラフ)

産学官と自衛隊

 しかし、これに飽き足りない自民党国防議員連盟(衛藤征士郎会長)は16日、岸田首相に「防衛予算における研究開発費について、来年度以降、少なくとも5000億円以上を確保し、5年以内に1兆円程度を確保すべきだ」などと提言。産学官に自衛隊を加えた連携研究拠点の創設まで主張しています。

 これに対して、学術研究を対象とする政府全体の競争的研究資金の半分以上を占める科研費は、およそ2200億~2400億円台を推移しています。

 科研費の他にも政府の競争的研究資金制度はありますが、ほとんどは医療・環境・エネルギー・農業など、各省庁が定めた特定の課題解決型の研究です。

 科研費は、基礎から応用まで、すべての分野で「研究者の自由な発想にもとづく」学術研究を支援する、文部科学省と日本学術振興会の事業です。科学の発展の種をまき、芽を育てるうえで、大きな役割を果たすことが期待されています。

 科研費の新規応募数は例年、10万件前後で推移。採択されるのは3万件弱(採択率20%台後半)です。大幅な増額と採択率の抜本的引き上げが求められていますが、予算は10年間、ほぼ横ばいです。

 その一方、岸田政権は、防衛省の研究開発費を激増させるだけでなく、今年5月に成立した経済安全保障法に関連する「先端的な重要技術」の育成プロジェクトに5000億円規模を投入する計画に前のめりです。

軍需産業の確立

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(写真)井原聰さん

 井原聰・東北大学名誉教授(科学技術史)は、この動きに「ウクライナで戦争が続いている間に進めてしまおうと、自民党が“全力疾走”を始めた」と危機感をもっています。

 軍事費倍増と合わせて「軍需産業の確立とそれに対応し得る研究者・技術者養成が、大学・研究機関などに要請される」と警鐘を鳴らします。限りある予算の中で、特定の分野が軍事研究の枠に誘導されることを井原さんは心配します。「競争的研究費がいびつなものになる危険がある」(中村秀生)

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