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2022年6月28日(火)

主張

生活保護減額違法

国は姿勢を改め支給水準戻せ

 2013年に安倍晋三政権が決定した生活保護費の基準額引き下げを違法とする判決が東京地裁で24日出されました。当時の厚生労働相の判断に過誤や欠落があったとして、決定の取り消しを命じました。引き下げを違法とした判決は21年2月の大阪地裁、今年5月の熊本地裁に続くものです。三つの判決はいずれも、政府が引き下げの根拠にしたデータの算定方法などに問題があることを指摘しました。恣意(しい)的なやり方で保護費をカットし、生活保護利用者に苦難を強いた不当性は明らかです。政府は控訴を断念すべきです。

「デフレ調整」道理なし

 13~15年にかけて安倍政権は、生活保護費のうち食料費や光熱水費などにあてる生活扶助の基準を平均6・5%引き下げました。削減総額は約670億円に上ります。このうち約580億円分の削減は物価下落による「デフレ調整」が理由にされました。厚労省は、過去に物価が下がっても生活扶助基準は据え置いたので、一般の低所得世帯の消費実態と比べ比較的高くなったと主張しました。

 東京地裁判決は、食料費や光熱水費など低所得世帯の家計に重要な費目の物価はむしろ上昇しているとし、基準が高いという説明は「にわかに認めがたい状況であった」とデフレ調整を前提としたことに疑問を投げかけました。

 厚労省はデフレ調整の際、総務省公表の消費者物価指数(CPI)を使わず、厚労省が独自に計算したCPIを使用しました。総務省CPIでは08~11年の物価下落率は2・35%でしたが、厚労省CPIは4・78%と大幅下落でした。

 下落率が高くなったことについて東京地裁判決は、テレビなどの価格が下がった影響を挙げました。その上で、生活保護利用世帯の支出総額に占めるテレビ等の支出は大きくなく、利用世帯の消費構造と厚労省CPIには大きな乖離(かいり)があると述べました。「基準引き下げありき」で、厚労省が都合のいい計算方法を持ち出したことに対する厳しい批判です。判決は、厚労相がデフレ調整の必要性について専門技術的な検討を行ったとはうかがえないとも指摘しました。

 判決が、厚労相のデフレ調整の判断について「必要性及び相当性の両面において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠き、あるいは専門的知見との整合性を有しない」と断じたのは当然です。

 13~15年の基準額引き下げは戦後最大の規模で、約96%の利用世帯で減額が強行されました。その影響の重大性について判決は(1)減額率がこれまでの生活扶助基準の改定の例に照らして突出している(2)利用世帯に広く不利益を生じさせている(3)利用世帯の生計維持にかかわっている―ことを列挙しました。岸田政権は判決を真摯(しんし)に受け止め、引き下げ決定を撤回し、削減分を緊急に元に戻さなければなりません。

生存権保障にふさわしく

 基準額引き下げは生存権を保障した憲法25条に反し、違法だとして取り消しを求める訴訟が29都道府県で1000人近い原告が参加したたかわれています。3地裁での勝訴は運動の重要な成果です。

 格差と貧困が広がる中、国民が権利として利用できて、生活が保障される制度に改革することが不可欠です。参院選でも問われる争点です。


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