2022年6月28日(火)
参院選 大軍拡の正体
軍事費2倍 11.2兆円に
財務省「国が脆弱に」
自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などが参院選で軍事費増を公約しています。大軍拡は一体何をもたらすのか。シリーズで考えます。
自民党などが主張する大軍拡には、財務省からも懸念が出ています。4月20日に財政制度等審議会の部会に提出した資料では、軍事費増加の問題点を列挙しています。
資料によると、2014年度に4兆8848億円だった軍事費が、22年度には5兆4005億円と、9年間で5157億円も増えています。
他の経費を削減
財源はどこから搾りだしたのか―。財務省は、「防衛関係予算の一貫した増加は、他の経費の削減・効率化を実施することで実現」した、としています。削減されたのは、中小企業対策費、エネルギー対策費、食料安定供給関係費などです。
現状でも日本の軍事費は諸外国に比べて少なくありません。財務省は、NATO(北大西洋条約機構)定義を参考にして恩給費や海上保安庁予算を含めると、日本は614億ドル(6・9兆円、GDP比1・24%)になると計算しています。フランス(571億ドル)、イタリア(327億ドル)を上回っています。G7(主要7カ国)では4位です。
すでに巨額の軍事費を確保しているのに、自民党は5年以内に、GDP(国内総生産)比2%以上を念頭に増やすとしています。
一体いくらになるのか―。資料は「GDP比2%の場合に必要な経費の水準は11・2兆円程度である」としています。
国民資産の毀損
軍事費増に必要な財源について、岸田文雄首相は説明を避けています。ただ自民党の安倍晋三元首相や維新は、借金である国債(公債)の発行を主張しています。
借金で軍拡費用を賄うことについても、財務省は懸念をあげています。資料は、第2次世界大戦中の1937~45年に日本が軍事費のため1498億円もの借金をし、戦後にハイパーインフレーションを引き起こしたことを紹介。「歯止めなき公債発行は、結果的に国民資産の毀損(きそん)を引き起こした」と指摘しています。
その上で現在の日本で裏付けのないまま軍事費を賄い続けると、「結果的にそれ自体が我が国の脆弱(ぜいじゃく)性になりかねない」と警告しています。
財務省が軍事費の増加をけん制するような資料を出したことについて、同省元幹部はこう解説します。
「財務省は歳出を抑えたいからだ。新型コロナウイルス対策でかなりの予算を使ったこともある。(軍事費を)GDP比2%にやろうと思えばできる。ただこれからの世代向けの予算、つまり教育費などを削減することになるだろう。それは決していいことじゃない」(三浦誠)