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2022年6月25日(土)

主張

「資産所得倍増」

預貯金を株対策に動員するな

 岸田文雄首相が掲げる参院選の目玉公約の一つが「貯蓄から投資へ」による「資産所得倍増」です。個人の貯蓄を株式などの金融投資に動かすのだといいます。多くの人にとっては、急激な物価高で毎日の暮らしを心配しなければならないときです。株や投資信託を買う資金を持つ人がどれほどいるでしょうか。投資の優遇策を拡充しても、恩恵を受けるのは資金の潤沢な富裕層です。格差をさらに広げかねません。

アベノミクスの焼き直し

 岸田氏は昨年の自民党総裁選で「令和版所得倍増」を力説しました。総裁選後この言葉は消え、代わって登場したのが「資産所得倍増」です。意味はまったく違います。

 「倍増」するのは所得ではなく金融資産の運用で得られる所得です。投資に回すお金のない人にとって無縁なもうけ話です。

 金融に関する公的な広報機関である金融広報中央委員会の調査によると、単身世帯の33%、2人以上世帯の22%が運用目的または将来に備える金融資産を持っていません。

 岸田政権の「新しい資本主義実行計画」や「骨太の方針」が狙いを明らかにしています。日本の個人金融資産2000兆円の半分以上は預金・現金で保有されています。貯蓄を投資にシフトさせて「持続的な企業価値向上」を図れば、恩恵が家計に及ぶ好循環が生まれるといいます。そのために年末に投資の優遇策を含めた「資産所得倍増プラン」をつくります。

 新しいどころか、アベノミクスの焼き直しです。株価は2倍に上がる一方、国民の所得は増えず、格差が広がっただけでした。

 自民党・公明党政権はこれまでも個人資産の多くが預貯金で保有され、投資に回らないことを問題にしてきました。預貯金が多いのは、所得が増えず、将来の生活に不安が強い中で大事な蓄えを守るためです。

 株や投資信託は元本保証がないリスク性のある金融商品です。損失を出す可能性があり、リスクの説明などをめぐって業者とのトラブルも絶えません。金融広報中央委員会も「お金の運用はうまくいくとは限りません」として、必要な貯蓄を確保した上で「当面使う予定のないお金」で投資するよう呼びかけています。

 高齢者の貯蓄が多いと言われます。物価高のさなかに年金を減らされ、介護や医療の負担が増える中で元本割れの心配のない預貯金は文字通り“命の綱”です。現役世代にとっても、賃金が上がらず、コロナ禍で暮らしの先行きが不透明なときに貯蓄を増やすのは当然です。

賃金、年金引き上げこそ

 そもそも預貯金金利の引き下げで家計から利子収入を奪い、資産所得を減らしたのは「異次元の金融緩和」で異常な低金利政策が続けられているからです。預貯金はほとんど利子が付かず、他行のATMを使えば手数料で消えてしまいます。今の2%を超える物価高では目減りさえしてしまいます。

 この政策を全面的に継承しながら、国民の預貯金をさらに株価つり上げに動員することは許されません。今、国がなすべきは投資の旗を振ることでなく、賃金や年金を引き上げて実際に国民の所得を増やす政策です。


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