2022年6月21日(火)
維新・国民 原潜保有論の愚
「原子力の平和利用」に反する
ロシアのウクライナ侵略を悪用した大軍拡をめぐり、日本維新の会や国民民主党などは「日本も原子力潜水艦を保有すべきだ」と主張していますが、原潜保有は一般的な軍拡とは異質の危険性や問題点を抱えています。
原潜は艦内に原子炉1~2基を搭載し、核分裂反応で生成されるエネルギーを動力源としています。日本が保有すれば「原子力の平和利用」を基本理念とした原子力基本法に真っ向から反します。
放射能漏れも
1964年以来、米原潜が横須賀、佐世保、ホワイトビーチ(沖縄県)への寄港を繰り返していますが、これまで放射能漏れ事故や、日本の領海内での1次冷却水(汚染水)放出を繰り返しています。日本初の原子力船「むつ」も放射線漏れ事故を起こしました。運用に伴う放射性廃棄物の処理など、原潜を保有すれば、こうした「核リスク」を抱えることになります。
1隻1兆円も
また、建造コストは莫大(ばくだい)なものとなります。防衛省が2022年度予算に計上した通常動力型潜水艦の建造費は1隻736億円ですが、米海軍が20年に契約した、核兵器搭載可能なコロンビア級弾道ミサイル搭載型潜水艦(SLBM)の1隻あたり平均建造費用は約75億ドル。急激な円安の下、換算すると1兆円を超えます。原子炉の入れ替えなど途方もない維持費もかかり、原子力艦船の保有は異次元の軍拡をもたらすことになります。
これだけのコストを費やしてでも原潜を保有する最大の理由は、燃料補給の必要がなく、地球の裏側まで潜航が可能だからです。さらに、米軍以外にも英国、中国、ロシアなどは他国領域付近まで侵入可能な原潜に核兵器を搭載し、核戦略の柱にすえています。
どう考えても「専守防衛」や非核三原則といった国防の基本方針に真っ向から反します。原潜保有を軽々に口にする勢力の思考は浅はかとしか言いようがありません。(竹下岳)