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2022年6月18日(土)

主張

米国の銃規制

「命を救う」保障をどう広げる

 米議会上院の民主、共和両党議員でつくる超党派グループは12日、国内で多発している銃乱射事件の抑制に向け、「21歳未満の銃購入者への身元確認厳格化」など規制強化策について合意しました。この合意には共和党議員10人を含みます。反対派の議事妨害があっても採択が可能な60人が支持に加わっており、今夏には法案が成立する見通しです。

多発する一方の乱射事件

 今回の法案が検討された背景には、銃乱射事件が頻発している米社会の深刻な現実があります。5月下旬だけでも、南部テキサス州ユバルディの小学校での乱射事件で、小学生19人を含む21人が犠牲となったのに続き、東部ニューヨーク州バッファローのスーパーマーケットでの乱射ではアフリカ系市民など10人が犠牲となりました。学校やスーパーという日常生活が営まれている場所での乱射事件が続いていることは米社会に暗い影を落としています。

 それだけに、米上院の超党派グループの声明でも「われわれの合意は命を救う」という点を強調しています。

 合意で、銃購入者の身元保証を厳格化し「21歳未満」としたのは、テキサス州とニューヨーク州の事件はいずれも容疑者が18歳だったことが背景です。▽自身や他者への脅威になると裁判所が判断した人物に銃を持たせない▽メンタルヘルスケアの強化▽学校の安全対策への資金援助―なども盛り込まれました。

 これらについて米国内では一定の評価があると同時に、抜本的な強化が見送られたことへの不満もあります。民主党が求めた殺傷力が高い半自動小銃や大容量弾倉の禁止は共和党の賛成が得られず、断念しました。

 米国には銃規制をめぐり、全米ライフル協会(NRA)をはじめ根強い反対勢力があります。NRAは献金攻勢をかけつつ、連邦議会議員に対して銃規制反対のためのロビー活動を続けています。

 そのもとでも、銃規制を求める運動が徐々に広がってきました。特に2020年までのトランプ政権4年間で人種差別と結びついた銃による暴力の頻発を受け、銃規制を求める動きは、人種差別への批判としても広がりました。

 世論調査では抜本的な銃規制に賛成し、議会に積極的な動きを求める人は59%となっています。

 特徴的なのは、銃規制の運動が、まともに暮らせる賃金を求める取り組み、地球温暖化への抜本対策を迫る活動などと並ぶ社会運動の一つとなっていることです。こうした草の根の運動に押され、20年の議員選では市民要求を掲げた候補の当選にもつながっています。今年11月の中間選挙でも銃規制は重要争点の一つです。

子ども死因1位が銃被害

 4月下旬、米ミシガン大学の研究グループが米国疾病予防管理センター(CDC)のデータを分析した結果として、19年~20年にかけて、1歳から19歳までの死亡者の死因では、銃によるものが交通事故を上回り、初のトップとなったことを発表しました。

 銃による被害がいかに米社会をむしばんでいるかを示す数字となっています。銃で身を守る社会ではなく、銃を持たない弱者を守る社会をどうつくるのか。米国に問われている課題です。


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