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2022年6月9日(木)

北朝鮮への米軍事行動「可能性6割」共有か

安倍氏ら戦争法施行後の17年

政府文書を証拠提出 前橋訴訟きょう控訴審

 米軍の戦争に日本が参戦する戦争法(安保法制)の施行翌年の2017年の北朝鮮危機で、米軍の「軍事行動の可能性が6割はあるのではないかと思っていた」と自衛隊の元最高幹部が回顧しています。こうした認識を当時の安倍晋三首相ら政府首脳が共有した可能性があることが8日までに、東京高裁で係争中の安保法制違憲訴訟に出された新証拠でわかりました。


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(写真)控訴審に提出された「国家安全保障会議」の資料と、これまで「特定秘密」だった河野統幕長とダンフォード米統合参謀本部議長(どちらも当時)の会談記録

 安保法制違憲訴訟は、16年4月以降、全国22の地裁で計25件提起されています。これまで裁判所は「(戦争などに)直面する危険性が現実化しているとはいえない」(前橋地裁、20年)などとして、原告の勝訴はまだありません。

 9日に東京高裁で開かれる前橋訴訟の控訴審にむけて、原告側は今年1月に政府が初めて開示した内部文書など新たな証拠を提出。そのひとつに安倍氏が議長だった「国家安全保障会議」の会議資料があります。同会議は、首相、副総理、官房長官、外相、防衛相らによる会合です。

 これによると北朝鮮と米軍の緊迫関係が高まった17年7月から同年末まで21回開かれた会議に、自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長(当時)が15回も参加していました。

 河野氏は米軍のダンフォード統合参謀本部議長(当時)らから情報を得て、「朝鮮半島における軍事衝突が、少なくとも『フィフティ・フィフティ』以上で起きるという感覚を持った」「軍事行動の可能性が6割はあるのではないかと思っていました」と、退官後に回顧(日本国防協会の講演)しています。

 別のインタビューでは、「安保法制に基づき、日本の平和と安全に重要な影響を与える状況下で自衛隊が米軍を後方支援できる『重要影響事態』や、集団的自衛権を行使して米軍への攻撃に自衛隊が反撃できる『存立危機事態』を想定した」(「朝日」19年5月17日付)と証言。自衛隊が参戦にいたる事態を考えたことを述べています。

 原告は、河野氏の「軍事行動の可能性が6割」などという認識が、国家安全保障会議で安倍首相ら政府首脳と共有されたのではないかとみています。

 9日の口頭弁論では、青井未帆学習院大学法科大学院教授が証言します。原告代理人の大塚武一弁護士は「1月に開示された政府資料で、戦争がいつ起きてもおかしくなかったことがようやくわかった。全国の安保法制違憲訴訟が新局面に入ったといえる。裁判所は真剣に向き合うべきだ」と語ります。


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