しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年6月8日(水)

志位和夫著『科学的社会主義Q&A 学生オンラインゼミで語る』

青年に展望示す入門書

日本民主青年同盟 西川龍平委員長

 本書は4月17日に志位委員長を招いておこなわれた民青同盟主催の講演企画「学生オンラインゼミ第2弾」の内容に、加筆・補正がほどこされたものです。12の質問と、それに対する志位委員長の回答で構成されています。12の質問のうち、10は学生同盟員から事前に寄せられた幾多の質問を踏まえて中央常任委員会が編集したものであり、残り二つが企画当日出された質問です。「さあ学んでみようかな」という気持ちになれる装丁のブックレットで、科学的社会主義の入門書として、すべての方に気軽に手にとっていただきたい本書ですが、私は、若い世代に本書を普及するという観点から三つのことを強調しておすすめします。

最初の文献として

 第一に、このような科学的社会主義の入門書が学生をはじめ若い世代から求められています。競争やスキルアップのプレッシャーに疲れてしまって、という実感を伴う場合もあれば、格差と貧困、気候危機、ジェンダー不平等などへの問題意識を突き詰めたら、という場合もありますが、「資本主義に限界を感じる」という青年は年々増えて、さらには社会主義・共産主義について興味をもつ青年も生まれています。

 しかし、階級闘争のもとで社会主義・共産主義への悪宣伝もおこなわれ、「ソ連や中国と同じ」「ロシアのウクライナ侵略は共産主義だから」といった誤解も振りまかれています。そのなかで『資本論』や『共産党宣言』などにたどり着き、挑戦し、正しく読み解けるひとは決して多数ではなく、私たちが打って出るにしても、基礎知識のない大部分の若い世代がまず最初に読むことのできる手軽な文献となるとなかなか見当たらないもどかしさがありました。「資本主義はもう限界なんじゃないか」と感じている青年たちに手渡し展望を示すことのできる簡便な科学的社会主義の入門書があれば(Q&A形式ならなお良い)――そのような要望に応えてくれるのが本書です。

 「学生オンラインゼミ第2弾」の段階でも「科学的社会主義とはなにか初めて知った」「社会主義のイメージが変わった」という感想が多く寄せられましたが、活字になったことでよりいっそう学べるものになりました。資本主義の矛盾が極まり、「資本主義全肯定」の青年というのはかなり少ないのではないかという感覚すらおぼえるいま、科学的社会主義という確かな理論的展望を示す本書はすべての青年にかみ合う可能性をもっています。若い世代にとりあえず本書を渡してみることが大事だと思います。

興味ひく部分から

 第二に、Q&A形式でどこからでも読み始めやすい。これが本書の入門書としての役割をいっそう際立たせています。もちろん頭から読むと流れがあってそれも面白いです。しかし、初めて科学的社会主義にふれるひとにとっては、最初に目次を見て、興味をひく質問のところから読むのもいい方法です。志位委員長のお父上が、中学3年生時の志位委員長にエンゲルス「猿が人間になるについての労働の役割」をすすめて“大成功”したことも本書には書いてありますが、このような“きっかけ”のあるなしは軽視できません。

 「理系の勉強のなかで、科学的社会主義が役に立つことがあるか」(質問4)、「『資本論』はなにがすごいのか」(質問5)、「ロシア侵略について科学的社会主義の立場からどう分析できるか」(質問8)など、Q&A形式の本書は、素朴な疑問であったりアカデミックな疑問であったり、科学的社会主義を学びはじめる“きっかけ”になりうるものが多彩な角度で盛り込まれており、かなりウイングが広くなっています。

 「学生オンラインゼミ第2弾」のときには、「理系の勉強のなかで、科学的社会主義が役に立つことがあるか」(質問4)への回答に際して「ハイゼンベルク・坂田論争」がでてきたあたりで目を輝かせている学生もいましたので、物理学に興味のある青年にはぜひこのくだりから読んでもらったらどうでしょう。

成長に「役に立つ」

 第三に、本書は、弁証法をはじめとした科学的社会主義の世界観(哲学)についてそれなりの割合を使って、初学者向けながらも重要なエッセンスを押さえて解説してくれます。これは、今後大学で諸学問を深めていったり、労働を通じて成長していったりする若い世代にとって大変重要なことです。科学的社会主義の世界観が、学問や労働をしていくうえで「役に立つ」ということももちろんありますし、これは大きな魅力です。

 弁証法を学んだことで大学の講義が面白くなった、といったような声は以前から少なくありません。同時に、より強調したいのは、科学的社会主義の世界観は、自分と社会進歩の関わりを正確に捉えさせてくれるものであり、青年がどう学ぶか、どう働くか、そして、かけがえのない人生をどう生きるか考え抜くうえで欠かせないものであるということです。とくに活字になるにあたっての加筆・補正で、世界観の部分はより深く学べるようになりました。腰を据えて、じっくり学んでほしいと思います。

 本書の最後、志位委員長は、学生へのメッセージとしてマルクスの「フォイエルバッハに」のテーゼを紹介しながら、科学的社会主義が「変革の理論」であることを紹介し、「最も人間らしい生き方」とは何であるのか述べています。「学生オンラインゼミ第2弾」のときに会場参加者がこのメッセージを真剣に受けとめていた緊張感は、活字になっても健在です。

 一人でも多くの青年にとって、本書が科学的社会主義の学習のはじめの一歩となり、やがて「最も人間らしい生き方」に踏み出していくきっかけになることを願い、組織をあげて普及していく決意です。


pageup