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2022年6月2日(木)

軍事費10兆円規模も

防衛研究所 「抑止破綻」で国民脅す

2000年度~19年度の
主要費目の増加率(決算ベース)
 ※東アジア戦略概観から
社会保障費 195%
防衛関係費 123.9%
国債費 107.8%
地方交付税交付金 107.2%
文教科学費 97.3%
公共事業費 82.5%

 防衛研究所は5月31日に公表した「東アジア戦略概観2022」で、22年度当初予算で約5・4兆円の軍事費について、「10兆円規模になるという考えもあり得る」と述べ、大軍拡を迫りました。岸田文雄首相は23日の日米首脳会談で軍事費の「相当の増額」を公約しましたが、防衛省シンクタンクの年次報告で具体的な金額に言及したことで、波紋が広がっています。

 概観は東アジアにおける「防衛支出のシェア」が、2000年は日本が38%でトップだったのに対し、20年では中国が65%と圧倒し、日本は17%まで低下していると述べています。さらに、韓国の軍事費増にも言及し、「このまま行けば数年以内に日本を上回る」としています。

 その上で、「日本も防衛費を増やさないできたわけではない」と指摘。2000年度~19年度の主要費目の増加率を比較した場合、軍事費は123・9%で、社会保障費の195%の次に多く、しかも「社会保障費の伸びが大きいのは高齢化が進む日本において必然」であり、「(予算)全体の中では防衛費が相対的に重視されている」と認めています。

 それにもかかわらず、「中国が日本を上回るペースで国防費を増加させている」として、さらなる軍事費増は避けられないと主張。攻撃側は防御側に対して3倍の兵力が必要になる「攻者3倍の法則」を当てはめ、中国の今後の軍拡を考慮し、その3分の1を目安にした場合、「防衛費の水準は10兆円規模になるという考えもあり得る」と述べています。

 概観は、「日本の財政事情が厳しいことは周知の事実」だとしながら、「仮に中国との関係で抑止が破綻した場合のコストは(軍事費増額分の)4兆円にはとどまらないだろう」と述べ、(1)財政破たんのリスクを負って軍事費を増やす(2)財政を重視し、抑止破たんリスクを負う―という、「どう喝」とも言える二者択一を迫りました。

 こうした論理にたてば、中国の軍拡が続く限り、日本も国民生活を犠牲にしてでも果てしなく軍拡を続ける必要があり、それこそ、戦前の「欲しがりません、勝つまでは」の再来となります。

 概観に欠如しているのは、「第3」の選択肢―外交による緊張緩和、軍縮の促進です。これがもっとも確実かつ安価で、東アジア全体の平和と成長をもたらす最善の道です。


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