2022年5月29日(日)
きょうの潮流
ある日、男の子が学校から帰ると、テーブルの上にりんごが置いてあって、ふと思います。「でも、もしかしたら、これはりんごじゃないのかもしれない」。何かの卵かもしれない、宇宙から落ちてきた星かもしれない、と想像は膨らんで…▼2013年、ものの見方は一つじゃないと呼びかける『りんごかもしれない』でデビューした絵本作家ヨシタケシンスケさんの展覧会が東京・世田谷文学館で開催中です。その名も「ヨシタケシンスケ展かもしれない」▼絵本の原画や、常に持ち歩いているメモ帳に描いたスケッチ2000点、作品世界を体験できる仕掛け遊具。平和そのもののような会場には、子どもの笑い声が響き、老いも若きも楽しげな表情でくつろいでいます▼座右の銘は「ものは言いよう」、よく口にする言葉は「それしかないわけないよね」、自分の絵本は「歩きやすくなるための松葉づえみたいなもの」というヨシタケさん▼どの作品からも、ほっとするメッセージが伝わってきます。人はみんな違う、だからこそわかり合えるとうれしい、誰もが主人公で、選択肢はたくさんある、つらいこともあるけれど、すごくいいことを思いつくかもしれない、何をしたって見守られているよ▼最新刊『かみはこんなに くちゃくちゃだけど』は、災害と戦争、コロナの時代に小さな希望を糧にきょう一日を積み重ねていく人々を描いた人間賛歌です。例えばこんなふうに。「つづきがよみたいマンガがあるの/まちはこわれてしまったけれど」








