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2022年5月26日(木)

平和・くらしと経済 日本の進路問う

代表質問 岸田自公政権と対決鮮明

 日本共産党の志位和夫委員長、田村智子副委員長は25日の衆参両院の本会議で代表質問を行い、物価高騰から国民の生活を守るため、「やさしく強い経済」へと根本的に切り替える五つの提案を行い、戦争のない東アジアの平和の枠組みを構築するよう主張しました。岸田文雄首相は、弱肉強食の新自由主義を続けてきた反省も示さず、軍事強化の姿勢も崩しませんでした。日本の進路が鋭く問われるなか、岸田・自公政権と日本共産党との対決構図が鮮明となりました。


新自由主義の転換迫る

共産党 物価高騰は失政

岸田首相「主に原材料高騰」

写真

(写真)岸田首相(中央)をただす志位委員長(左)と田村副委員長=25日、国会内

 急激な物価高騰が暮らしを直撃し、国民から悲鳴が上がっています。志位氏は、新型コロナウイルス、ロシアによるウクライナ侵略だけではなく、「アベノミクス」の「異次元の金融緩和」が異常な円安と物価高騰を招いたことは誰もが認める事実だと指摘。「この重大な失政の責任を認め、金融政策を根本から見直すべきだ」と迫りました。岸田首相は「物価上昇は主に世界的な原材料価格の高騰によるものだ」と述べるだけで、まともに答えませんでした。

 志位氏は、国民の生活苦の根本には新自由主義があることを指摘。労働法制の規制緩和で非正規雇用が4割近くに増え、「賃金が上がらない国」になったことや、社会保障の連続削減でこの10年間で公的年金が実質6・7%も減らされてきたことを挙げ、「弱肉強食の新自由主義が日本経済を『冷たく弱い経済』にしてしまったことが、国民の生活苦の根本にあるという事実を認めるか」とただしました。

 岸田首相は「新自由主義は世界経済の成長の原動力となった」「『新しい資本主義』のもと、成長と分配の好循環を生み出す」などと述べ、国民の生活苦に背を向ける姿勢を示しました。

 田村氏は、岸田政権が物価高への対策として、ようやく補正予算案を提出したものの、具体的施策は実質、ガソリン元売り価格の抑制だけだと指摘。食用油39%、生鮮食料品12%、電気代21%など、生活に不可欠な品目ほど値上げ幅が大きいことをあげ、「これで物価高の対策になるのか」とただしました。岸田首相は「総合緊急対策を迅速に実行する」とまともに答えませんでした。

「やさしく強い経済」へ

共産党 消費税5%減税 緊急に

岸田首相「考えていない」

 志位、田村両氏は、物価高騰から暮らしを守るには、小手先の対策ではなく新自由主義を終わらせて「冷たく弱い経済」から「やさしく強い経済」への転換が必要だと五つの提案を行いました。

 第一は、消費税を緊急に5%に減税するとともに、中小零細業者やフリーランスを苦しめるインボイス(適格請求書)制度の導入を中止することです。

 志位、田村両氏は、政府の物価対策はガソリンなどごく一部に限られているが、生活必需品の値上げは深刻で所得の少ない人ほど打撃が深刻だと指摘。志位氏は「消費税減税こそ物価高騰から暮らしを守る上で最も効果的な対策だ」と強調しました。

 円安のもと大企業の利益は過去最高となり、富裕層も大きく資産を増やしていることを示し、「大企業と富裕層に応分の負担を求め、消費税を減税することは、税の公正という観点からも当然のことだ」と訴えました。

 田村氏は、「読売」の世論調査でも政府が優先的に取り組むべき対策として「大企業や富裕層への課税強化などの税制の見直し」と答えた人が50%にのぼっていることにふれ、「これこそ国民が求めている公正な税制のあり方だ」と強調しました。

 岸田首相は「消費税減税は考えていない」「インボイス制度は必要なものだ」などと答えました。

共産党 内部留保課税を

岸田首相「慎重な検討必要」

 第二の提案は、「賃金が上がる国」にするために政治が責任を果たすことです。

 志位氏は「大企業の内部留保はアベノミクスの8年で130兆円も増え、466兆円にも達している。40兆円もの大企業減税が行われてきたことが一因だ」と指摘。日本共産党が提案した大企業の内部留保課税を紹介し、「政治の責任で賃上げを推進すべきだ」と強調しました。

 日本共産党は、「アベノミクス」で増えた大企業の内部留保に毎年2%、5年間で10兆円の時限的課税を行うことを提案しています。志位氏は、これには▽大企業への行き過ぎた減税の不公平をただす▽適切な控除を設けて「賃上げ」と「グリーン投資」を促進する▽10兆円の税収を中小企業への支援にあてて最低賃金を時給1500円に引き上げる―という「一石三鳥」の効果があると強調しました。

 田村氏は、諸外国の最低賃金はイギリスでは4月から6・6%引き上げて9・5ポンド(1520円)へ、ドイツでは7月から14・8%引き上げて12ユーロ(1620円)になると指摘。「物価高騰対策として日本でも最賃の大幅引き上げを決断すべきだ」と求めました。岸田首相は「内部留保への課税については、慎重な検討が必要になる」などと答えました。

共産党 年金削減の中止を

岸田首相、答えず

 第三の提案は、社会保障と教育予算を経済力にふさわしく充実することです。

 志位氏は、6月から年金支給額がさらに減額されようとしていると指摘し、物価高騰時の減額は「あまりにも理不尽だ」と厳しく批判。「持続可能にするため」と言うが、現役世代の年金不信をひどくするだけだと強調し、年金削減の中止と、低すぎる年金の底上げを求めました。

 田村氏は、2019年の世論調査で「公的年金制度が信頼できない」との回答が65%に上るとして認識をただしました。

 岸田首相は年金削減については答えず、「信頼を確保することが重要だ」としか述べませんでした。

 教育費の負担軽減について志位氏は、大学の学費を半分にし、入学金制度の廃止、給付奨学金の抜本拡充を求めました。

 田村氏は、食材の高騰が学校給食に影響を与えており、給食費無償の要求に政府は、地方創生臨時交付金を使えると言うが「1年限りの交付金だ」と指摘。憲法制定後の1951年に、日本共産党議員の質問に政府が教科書、学用品、学校給食などを無償とすることが理想だと答えたことをあげ、「いまだ実現していないことが問題だ」と批判。給食費無償化に向け全国で負担軽減を行うよう求めました。

共産党 再生エネ大規模に

岸田首相「バランスよく活用」

 第四の提案は、気候危機打開を日本の産業と経済成長の大戦略とすることです。

 志位氏は「日本のエネルギー自給率は10%程度。先進国で最低水準だ」と指摘。「原油価格高騰は、いつまでもエネルギーを外国に頼る危うさを示している」とただしました。

 岸田首相は「エネルギー自給率の向上は重要だ」としつつ「原子力や火力を含む多様なエネルギー源をバランスよく活用する」などと答えました。

 志位氏は、日本共産党が提案した2030年までに省エネと一体に再エネで電力の50%をまかない、二酸化炭素を最大60%削減する「2030戦略」にふれ、気候危機打開へ向け、100%国産の再エネの大規模普及を図るべきと強調。原発即時ゼロ、石炭火発からの撤退を決断するよう求めました。また、農業再生は持続可能な社会のカギだと指摘。37%まで落ち込んだ食料自給率をさらに引き下げる水田活用交付金の削減を中止するよう求めました。

 田村氏は、日本は1980年ごろまで太陽光、風力発電ともに世界のトップランナーだったとして、石炭火力や原発にしがみつき、再エネの普及で世界に後れを取ることは「日本経済と産業に大きなマイナスとなる」と批判しました。

 岸田首相は「海外市場が急拡大していく中、投資競争に対応できなかったことが太陽光や風力発電の競争力低下の要因の一つだ」と答えました。

共産党 男女の賃金格差なくせ

岸田首相「早期に制度改正」

 第五の提案は、ジェンダー平等の視点を経済政策に貫くことです。

 志位・田村両氏は、日本共産党が生涯賃金で1億円にものぼる男女の賃金格差をなくすため、企業に対し格差公表の義務づけを繰り返し求めてきたと言及。岸田首相が公表義務づけの方針を表明したことは一歩前進だとして、公表の徹底と、企業に是正計画の作成を義務づけ、国が実施を促す仕組みが必要だと強調しました。

 岸田首相は、早急に女性活躍推進法の制度改正を行うと明言。「労働者300人を超える事業主に、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を開示することを義務化し、この夏に施行するよう準備を進める」と答えました。

外交力で平和つくる

共産党 東アジアの包括的な平和の枠組みこそ

岸田首相、具体策示さず

 田村氏は、140を超える国と地域が国家体制や宗教・文化の違いを超えロシアによるウクライナ侵略を非難する国連決議に賛成したことを指摘。「国連憲章守れ」の国際的な団結をさらに広げる外交こそ最も求められると強調しました。

 田村氏は、バイデン大統領が「民主主義対専制主義のたたかい」と表明し、岸田首相が「価値観を共有するG7(主要7カ国)主導の秩序の回復」などと主張したことに対し、「西側の構図を押し付けるものだ」との国際的な批判の声が上がっていることを指摘。大事なことは、価値観の違いによる世界の分断ではなく、「ロシアは国連憲章を守れ」との共同を中国を含むアジアの国々に広げることだと強調しました。

 さらに田村氏は、「戦争の心配のない東アジアをどう実現するかが問われている」と主張。23日の日米首脳共同声明で「米国の『拡大抑止』が強靭(きょうじん)なものであり続けることを確保する」と合意したことについて、「『拡大抑止』とは、いざとなったら米国の核使用を認めることだ」「それは広島・長崎の惨禍を再び引き起こすことになる」と述べ、「核兵器のない世界を目指す」との岸田首相の表明にも矛盾すると批判しました。

 岸田首相は「米国の拡大抑止はわが国の安全保障にとって極めて重要だ」と述べ、「安全保障を確保しつつ同時に核兵器のない世界に向けて努力をすることは決して矛盾していない」と強弁しました。

 さらに田村氏は、共同声明で岸田首相が「防衛費の相当な増額の確保の決意」との大軍拡を明言したことに触れ、新たな国家安全保障戦略等の提言で自民党が提案するGDP(国内総生産)比2%以上の防衛予算を目指すものかと追及。財源確保のため、消費税増税や社会保障予算の抑制・削減、国債発行が狙われるのではないかと指摘し、「財源の見通しがないまま米国と約束するなどありえない」と批判しました。

 岸田首相は「防衛力の抜本的強化にあたって必要な裏付けとなる予算を確保していく。防衛費の財源のありかたについても検討していく」と述べました。

 田村氏は、「核兵器には核兵器」「軍事には軍事」の悪循環では、東アジアの平和を構築することはできないと強調しました。米国・中国・日本・韓国など8カ国が参加する「東アジアサミット」で平和の枠組みを強化する東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みを例示。岸田首相も「平和の枠組みは重要」と述べたことを挙げ、東アジアの包括的な「平和の枠組み構築」のための具体的な施策をただしました。

 しかし岸田首相は、「東アジア首脳会談は重要な会議だ。今後ともしっかりと活用していく」と述べるにとどまりました。


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