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2022年5月23日(月)

日米地位協定の前身「行政協定」草案で

米軍の基地外訓練 規制検討していた

現状は野放し

 米軍の特権を定めた日米地位協定の前身である日米行政協定をめぐり、「駐在地区」外での訓練や移動などで日本側が米軍の行動を規制する権限を持てるよう検討していたことが、外務省が1950年12月に作成した文書から判明しました。


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(写真)外務省作成の文書「軍隊駐在に関する技術的問題の研究」。駐在地区外での訓練・演習について、面積や位置、使用期間について日本政府との協議を求めている

 低空飛行訓練をはじめとした基地外での訓練が激化し、住民に深刻な被害をもたらしていますが、現在の地位協定では提供区域外の訓練についての規定はなく、日本政府は「日米安保条約の目的達成のため」として野放しにしています。

 文書は、外務省が昨年9月に公開した「軍隊駐在に関する技術的問題の研究」で、「極秘」指定されています。日本側の行政協定草案にあたるもので、都内の外交史料館で閲覧できます。

 文書は、米軍が区域外で訓練を行う場合は「面積や位置、その使用期間について、あらかじめ日本国政府と協議しなければならない」と明記。さらに、居住区域への出入りや駐在地区間の移動をする際は、「両国政府の合意によって定められた経路によることを要し、且つ、平常状態においては、あらかじめその都度又は包括的に日本国政府に通告して行わなければならない」としています。

 米軍の移動や通過を規制する理由について、文書は「合衆国と交戦関係にある第三国より駐在地区外の地域も駐在地区と同様に無差別に攻撃される可能性が増加し、日本国に不利だから」だとしています。現在の地位協定では、基地間移動に伴う経路は何ら規制されておらず、日本政府も「米軍の運用に関わる」として経路を明らかにしていません。

 一方、NATO(北大西洋条約機構)加盟国のドイツやイタリアでは、外国軍の低空飛行訓練や基地外での演習を行う際は、当該国の当局が許可を行うことになっています。

 日米行政協定をめぐっては、52年1月29日から正式な交渉が始まりました。しかし、わずか1カ月の交渉で締結し、国会承認さえ行われず、4月28日に発効。超短期間の交渉で、日本側の要望はほぼ一蹴されました。

経緯明らかにし植民地的状態解消を

志位委員長が見解

 日本共産党の志位和夫委員長は19日の記者会見で、外務省の日米行政協定草案について問われて、次のような見解を示しました。

 NATO(北大西洋条約機構)の地位協定は、最初は、戦勝国同士の協定としてスタートし、敗戦国のドイツとイタリアもその後の抜本的な改定で対等性が確保されていますが、日本の場合は占領体制の継続というところに世界に類のない大きな問題があります。

 この文書は、行政協定締結にいたる過程で、いくらなんでもこれではまずいだろうと当時の政府が考え、米軍の自由勝手・無制限な基地の使い方に歯止めをかけようとしたものです。それにもかかわらず、行政協定は占領軍としての米軍の特権を全面的に保障するものとなりました。その経緯は今後、糾明していく必要があります。

 重大なのは、行政協定の内容が、基地権や刑事裁判権放棄などの密約などにより、現在の日米地位協定にそのまま引き継がれていることです。米国の同盟国で、こんな植民地的な地位協定を結んでいる国はありません。これに指一本触れようとしない現在の政府は、独立国としての精神を投げ捨てていると言わざるをえません。

 占領下の政府ですら異常と考えた米軍の特権を、異常と考えない現在の政権の対米従属の異常さを、この文書は明らかにしたといえるでしょう。


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