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2022年5月20日(金)

主張

原発事故の賠償

被害実態に見合う指針改定を

 原発被害者訴訟原告団全国連絡会が16日、「被害者の救済に関する共同要求」を発表しました。すべての被害者に対する真摯(しんし)な謝罪と被害実態に即した十分な賠償、被害の実情に見合った賠償指針などを求めています。

 東京電力福島第1原発事故の被害者が東電や国に損害賠償を求めた集団訴訟7件については、政府が定めた賠償指針を超える賠償を東電に命じた高裁判決が確定しています。

 政府は、司法判断を踏まえて、賠償指針を改めるべきです。

全面賠償に責任を果たせ

 原発事故の賠償について定めた原子力損害賠償法は、過失の有無にかかわらず原子力事業者に賠償責任を課すとともに、文部科学省に設置した原子力損害賠償紛争審査会が賠償の指針を定めるとしています。

 審査会は、2011年の福島第1原発事故後、現地視察も行い、賠償についての「中間指針」を策定しました。自主的避難、避難区域見直し、風評被害、避難長期化についての「追補」もつくりました。また、和解仲介手続きのために、原子力損害賠償紛争解決センターを設けました。

 東電は、和解仲介案を尊重すると表明しながら、実際には和解を拒否する事例が相次いでいます。しかも東電は、一連の訴訟で、指針に基づいて支払った賠償金は払い過ぎだとまで主張しました。賠償責任を負う加害者としてあまりに不誠実な態度です。

 福島県の双葉・大熊・富岡・楢葉の原発立地4町は16日、東電の小早川智明社長と萩生田光一経済産業相に、原告以外の被害者にも確定判決と同等の賠償をするよう求めました。

 東電は被害者に誠実に向き合い、すべての被害者に対して十分な賠償をしなければなりません。

 裁判では、指針に定めのない「故郷が喪失し、変容したこと」への慰謝料や、指針で賠償対象区域とされなかった地域住民への賠償が認められ、自主避難者等への賠償額も拡大されました。

 福島県原子力損害対策協議会は、4月、東電に対して賠償責任を全うするよう求めるとともに、国に対しても賠償指針の検証を速やかに行うことを求めました。

 ところが岸田文雄首相は、国会で問われても、指針見直しの要否は「審査会において議論いただくもの」(3月10日、参院予算委員会)と人ごとです。被害の全面的な賠償に政府自身が責任を負う自覚がないことは重大です。

 政府の地震調査研究推進本部が02年に公表した地震予測の長期評価を踏まえれば、国も東電も、東日本大震災のような津波の可能性を認識できたはずです。建屋の浸水を防ぐ「水密化」などの対策がとられていたなら、事故の発生と拡大を抑えることができたでしょう。

国は誠実に対応すべきだ

 国も、東電に対策を取らせるよう規制権限を行使することを怠りました。国の責任は明確です。

 事故に対する国の責任については、高裁の判断が分かれており、6月17日に最高裁が統一的な判断を示します。岸田政権は、最高裁の判断を待つことなく、責任を認め、被害者の救済、除染をはじめ事故被害の復旧など、誠実に対応すべきです。


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