しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年5月18日(水)

きょうの潮流

 そこは戦争によって生まれた町でした。京都府宇治市伊勢田ウトロ51番地。戦時中、国策事業だった飛行場建設のために集められた朝鮮の人たちが戦後もくらしてきた地区です▼過酷な労働を強いられながら、終戦後は使い捨てのように放置。飯場と呼ばれる木造平屋建ての住居が密集し、水道も整備されない劣悪な環境が続きました。それでも第二の故郷として助け合ってきました▼教育や就職、結婚。生活のあらゆる場で受けてきた差別や、強制立ち退きともたたかってきました。在日朝鮮人の苦難を刻んできた地。先月開館した「ウトロ平和祈念館」はそうした歴史を通して人権や共生の大切さを発信しています▼昨夏この場所で起きた放火事件の裁判が始まりました。罪に問われている22歳の男は初公判で犯行を認め、検察側は動機について「韓国人への悪感情を抱いていた」と指摘。男は注目を浴びたかったとも話しているといいます▼背景にはゆがんだ事実認識や人種差別があるとみられます。住民や弁護団は、これはヘイトクライム(憎悪犯罪)で与える影響は大きいと。実際「自分の体が燃やされたよう」「また起きるのでは」との恐怖や不安の声も上がっています▼憎悪や偏見による犯罪は許さない。政府や行政に求められる姿勢ですが、日本では沈黙どころか、政権の長がそれをあおる言動も。焼失した、この場所の歩みを刻んだ看板。そこにはこんな言葉が記されています。「ウトロをなくすことは日本人の良心をなくすこと」


pageup