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2022年5月10日(火)

主張

香港行政長官選出

さらなる民主主義破壊許すな

 香港政府トップの行政長官に8日、李家超・前政務官が選出されました。7月1日に就任します。警察官僚や政府の治安責任者として中国政府と一体に民主化運動を弾圧した人物です。人権侵害がいっそう強まることが懸念されています。

中国と一体に弾圧を指揮

 行政長官選出に一般市民は投票できず、業界や職能団体の代表から成る選挙委員(定数1500)による投票です。委員は「親中派」にほぼ独占されています。立候補には中国政府への忠誠が義務づけられ、中国の意向が貫かれる仕組みです。候補者は李氏一人だけでした。民意を反映した選挙ではありません。

 1997年の英国からの香港返還以来4代の行政長官はいずれも「親中派」でしたが、出身は経済界や民生担当者でした。弾圧を指揮した元警察官僚を充てたところに香港の自由と民主主義を根こそぎにしようとする中国政府の狙いが表れています。

 李氏は警察の要職を歴任し、2017~21年、治安担当の閣僚にあたる保安局長を務めました。その間、普通選挙の実施を求めた「雨傘運動」参加者の逮捕や、犯罪容疑者の中国本土移送を可能にする逃亡犯条例改定反対運動の取り締まりにあたりました。

 李保安局長の在任中、20年6月に制定、施行された国家安全維持法(国安法)は中国治安機関の出先を香港につくり、活動家の大量逮捕、民主化団体の解散を一気に進めました。香港の「高度な自治」を定めた「一国二制度」を形骸化させる行為です。

 21年6月には政府ナンバー2の政務官に昇格し、行政長官立候補のため辞任した22年4月まで務めました。

 李氏は立候補にあたって「国家安全条例」の制定を公約に掲げました。「国家反逆、国家分裂、反乱扇動」や「国家機密の窃盗」を禁止するといいます。

 すでに国安法が「国家分裂」や「政権転覆」を最高無期懲役の重罪としています。何の行為が罪にあたるかは当局の判断しだいです。言論で中国や香港政府を批判してきた市民が逮捕、起訴され、有罪判決を受けています。政府を批判したメディアは解散に追い込まれ、香港の自由と民主主義は壊滅的打撃を受けています。

 李氏は市民を抑えつける法規を幾重にも制定し、恐怖で支配しようとしています。当選後の記者会見では「内外の脅威や破壊に対抗する」と表明しました。しかし香港市民にとっての脅威は中国政府による人権弾圧です。

人権取り決めを守る義務

 中国による人権弾圧は、人間の自由、平等をめざす社会主義と相いれず「共産党」の名に値しません。人権と自由の発展には国によってそれぞれの過程がありますが、国家が人権と基本的自由を守り促進させることは、今日の国際社会で国連憲章にも明記された普遍的な義務となっています。

 中国は世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言など人権保障の国際取り決めに賛成しており、言論の自由などの人権規定を守る義務があります。国際社会の批判を「内政干渉」として拒否することは通用しません。香港の民主主義破壊をやめよと中国に求める声をさらに高める必要があります。


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