2022年4月29日(金)
きょうの潮流
「まさか、戦争か。民間人の捕虜か。ウクライナの人たちを思うと、シベリアに抑留され捕虜として強制労働させられた日々と重ねて、ロシアに怒りが湧く」。横浜市の自宅で、こう話す新関省二さん。この4月に96歳となりました▼旧日本軍の兵士として満州(中国東北部)で1945年8月、日ソ中立条約を破棄して侵攻してきたソ連軍に部隊ごと捕まり「日本に帰す」とだまされて、シベリアに連行されました▼零下40度を超す極寒の地。炭鉱に入る強制労働を4年間強いられました。「栄養失調になる人、虱(しらみ)で感染するチフスにかかった人…。30代の人からバタバタと亡くなった。ソ連軍の指示で、遺体に服はいらないと素っ裸にして、凍った雪原にバラバラに埋めた」▼当時ソ連の指導者・スターリンが出した秘密命令によって、シベリアなどへの移送・抑留が始まりました。60万人以上が強制連行され、飢えと寒さや重労働で6万人以上が犠牲になりました。捕虜の人道的な取り扱いを定めた「ジュネーブ条約」にも違反する反人道的大事件でした▼77年たった今も被害の実態は解明されず、遺骨も半分以上が各地に残され、ウクライナにも。核兵器で脅し、病院や民間人への無差別攻撃など戦争犯罪を重ねるプーチン政権は、旧ソ連同様の覇権主義のおごりがありありと▼「戦争は、ひどい目に遭う捕虜が出る。遺族や遺骨が生まれることは耐えられない」。世界と連帯した戦争ノーの圧倒的な運動を老いも若きも、侵略を止めるまで。








