2022年4月27日(水)
きょうの潮流
その動画を目にしたとき、ためらいもなく暴力をふるう姿におののきました。後ろ向きに立たせた生徒を思い切り、蹴り、殴る。しかも、ほかの生徒が見ている中で。これは常習だなと感じさせる光景でした▼熊本・八代市にある私立秀岳館高校のサッカー部の生徒が男性コーチから暴行を受けている動画が拡散されました。このコーチは動画に映っているのは自分だと認め、警察も暴行の疑いで書類送検しました▼驚いたことに、この件をうけて部員たちが世間を騒がせたと謝罪する動画を一時投稿。監督が暴行を公にした生徒を加害者呼ばわりし、被害者である自分が訴えたらどうなるなどと脅していたことも明らかになっています▼同部は全国大会にも出た県内屈指の強豪。200人ほどの部員に複数の指導者がいるといいます。日常的にこうした暴力があったのか、徹底した実態調査が求められますが、部や学校側の対応の鈍さが気になります▼日本のスポーツ界は9年前に「暴力行為根絶」を宣言し、高校スポーツを統括する高体連も名を連ねています。そこには、指導者は「暴力行為がスポーツの価値と相反し、人権の侵害であり、人々の基本的権利であるスポーツを行う機会を奪うことを自覚する」と明記されています▼いまだに後を絶たない指導現場での暴力。根絶宣言を過去のものとせず実効あるものにするには、当事者だけでなく周りもそれを許さない心構えで声をあげ続けること。これは問題だと世に知らしめた生徒のように。








