2022年4月25日(月)
きょうの潮流
地の先、大地のゆきづまり。アイヌの人たちはそう呼んできました。厳しい自然と人を寄せつけない地形。それが独自の生態系を守ってきました▼オホーツク海に突き出すようにのびる知床半島。「船でしか行けないまさに秘境」「ヒグマに出会える確率94%」。ウトロ港から知床岬まで往復するコースの最中に遭難した観光船のうたい文句です。子どもを含む乗客24人と乗員2人の26人が乗っていました▼救助を求める連絡があったのは23日の午後1時ごろ。「船首が浸水して沈みかかっている。エンジンが使えない」。現場は「カシュニの滝」付近で、潮の流れが速く暗礁がある危険な場所だといわれます。当日は朝から強風や波浪注意報も出されていました▼なぜ悪天候のなかで船を出したのか。地元では別の運航会社の乗組員や漁師から疑問の声があがっています。また、この観光船は昨年も同じ航路で2回事故を起こし、船首に亀裂が入っていたとの証言もあります▼一夜明けて発見が続きましたが、相次いで死亡が確認されています。海は冷たく、まだ見つからない乗客の捜索が急がれます。原因究明はこれからですが、安全がおろそかにされていなかったか、徹底した調査が必要でしょう▼風の半島とも呼ばれる知床沖では春に大規模な海難事故を経験し、観光船による事故もたびたび起きています。豊かな動植物が息づく断崖絶壁に囲まれた聖域。そこに近づく人間もまた、過酷な自然環境のまえに謙虚でなければならないはずです。








