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2022年4月2日(土)

主張

成人年齢引き下げ

若者の消費者被害防ぐ措置を

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改定民法が1日施行されました。18歳になると、おとなとして自分で決めることができる範囲が一気に広がります。2015年からの選挙権の行使に続き、これからは親などの同意を得ないで高額な商品の購入、ローンやクレジットカードの契約が可能になります。自己決定権を拡大するという積極的な意義があります。

 一方で未成年者取消権が適用されなくなるため、消費者被害の拡大などが懸念されています。改定民法施行後の現時点でも、成人年齢引き下げへの政府の対策は極めて不十分のままです。

取消権の保護から外れる

 未成年者取消権は、未成年であることを証明するだけで、「だまされた」「脅された」と立証しなくても契約を取り消すことができる権利です。消費者被害を抑止する防波堤とも言われています。

 日本弁護士連合会や消費者団体から、18、19歳が未成年者取消権の保護から外されれば、若者の消費者被害が増加するとの強い危惧が示されていました。

 国会でも未成年者取消権の対象外になることが大問題になりました。18年の民法改定案の審議の際、参院法務委員会は全会一致で付帯決議をしました。成人年齢引き下げに伴う消費者被害拡大を防止するための法的措置として、消費者契約法の改正など8項目の対策が盛り込まれました。

 ところが、改定法成立後3年以上経過したいまも付帯決議の内容は実現していません。最も重要な「つけ込み型不当勧誘取消権」も定められていません。法相は「成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議」の議長です。にもかかわらず法務省は特設ウェブサイト「大人への道しるべ」での周知・広報など以外は、所管する付帯決議事項の対象ではないと無責任な態度です。

 被害のなかでも、高校生を含む18、19歳のAV出演強要問題は特に深刻です。AV映像は、インターネット上で拡散され、記録され続け、被害は重大です。

 政府は詐欺・脅迫等を理由とする取消権を行使できると主張します。しかし、プロダクション、メーカーなど関係者が多く、多額な違約金が発生すると言いくるめられてしまうケースが少なくありません。加害者の脅しがある場合も書面の証拠が残らず、立証困難で泣き寝入りを余儀なくされるのが現状です。長期にわたり甚大な被害を受け心身の健康を害し、自死に追い込まれることもあります。

 未成年者取消権は18、19歳のAV映像の販売・流通を止める有効な救済手段でした。しかし、1日からは未成年者取消権による救済ができなくなります。政府の不作為によって、取り返しのつかない被害を拡大させることは絶対にあってはなりません。

新成年支援の議論を急げ

 実践的な消費者教育の充実、消費者被害への相談体制の強化・拡充などだけでなく、18、19歳を消費者被害から守る実効性のある対応が緊急に必要です。未成年者取消権に匹敵する包括的な取消権の創設、取消権を遡及(そきゅう)的に行使できる法整備が不可欠です。

 おとなとしての新たな人生を歩み始める18、19歳の若者を支援する政策について、改めて国民的議論が求められます。


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