2022年3月30日(水)
きょうの潮流
花曇りの日、近所にある川沿いの桜並木を歩きました。ときおり足を止めながら満開の花をめでる人びと。マスク越しにみえる表情もやわらかい▼川沿いに桜が多いわけには先人の知恵が隠されているそうです。江戸のころ、川の氾濫で土手が決壊することもしばしば。根をたくさん張る桜は堤防に適していたこと。また、大勢が花見に訪れることで土手を踏み固めてくれるからと▼〈さまざまのこと思ひ出す桜かな〉。芭蕉の句にもあるように、人は桜をながめながら思いにふけり、よわいを重ねてきました。震災やコロナ、そして戦争…。穏やかならぬ日々が絶えない昨今はとくに、心の癒やしをもとめるように▼命やくらしが理不尽に奪われていく現実のなか、なにか確かなもの、よりどころとなるものはないのか。たとえばロシアによるウクライナ侵略を国際社会が非難するなかでは、世界人権宣言が改めて注目されています。「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利について平等である」▼第2次大戦の反省から、国境をこえた人類共通の普遍的な価値として国連が示したものです。そのもとで歩んできた国際社会は、いままた「あらゆる国際人道法違反や人権侵害を非難する」とした人道決議を、140カ国の賛成で採択しました▼話を戻せば、日本が戦争をくり返していた時代、花期の短い桜は「死を飾る花」とされました。しかし本来、桜は生命の輝きとして美しさをたたえられてきました。命の謳歌(おうか)を。








