2022年3月16日(水)
きょうの潮流
「戦争の最初の犠牲者は真実である」。戦時下でゆがめられる情報や報道規制について語られた言葉です▼米映画「5デイズ」の冒頭で映し出されました。グルジア(現ジョージア)とロシアの紛争を描いた2011年の作品。主人公のジャーナリストがロシア軍の、非武装地帯への空爆を告発しようとします。時は08年、北京オリンピックでメディアはこぞって五輪報道。戦争の動きはかき消されて…▼現在のロシアのウクライナ侵略に通じます。市民やジャーナリストが銃撃にさらされる中で、ロシアのプーチン大統領が打ち出した報道統制はすさまじい。虚偽報道禁止法は、当局が「フェイクニュース(偽情報)」と見なした場合、最大15年の禁錮刑が。ウクライナ侵略に反対する報道を禁止するものです▼編集長がノーベル平和賞を受賞した独立系新聞は、サイトから侵略に批判的な記事を削除。イギリスBBCやCNNは一時、活動を停止せざるをえませんでした▼ロシアのメディアが流す情報は、「ウクライナの非ナチス化のために軍事作戦を開始する」。国民の68%が支持しているといいますから、あなどれません。これに対し、ニュースを放送中のテレビ画面で反戦を訴えた勇気ある女性ディレクターも▼日本に目を向けると、新聞の番組欄に並ぶのは「首都キエフに迫る包囲網」「プーチン氏今どこに潜伏」。真偽不明の戦況報道が多い。真実を犠牲者にしてはなりません。メディアには、戦争を許さない確固とした立ち位置が必要です。








