2022年3月12日(土)
きょうの潮流
そこはいま、公園に変わっています。犠牲になったすべての命の追悼とともに、あのときの記憶と教訓を後に伝え、人と人がつながる場所として▼東日本大震災でおよそ4千人が亡くなり、最大の被災市町村となった石巻市。なかでも北上川の河口にある南浜地区は、津波と火災によって壊滅的な被害をうけました。その後、復興祈念公園として整備され、今年も3・11をはさんで多くが訪れています▼園内に造られた「みやぎ東日本大震災津波伝承館」。そこで地元の大学生が思いを伝えていました。佐々木優衣さんと黒須香澄さん。観光とまちづくりをテーマにした大学のゼミをきっかけに同館の解説員を務めています▼ともに被災したのは10歳の頃。ふたりが通っていた釜小学校も津波に襲われ、児童24人が死亡、1人は行方不明のまま。命こそ助かりましたが、身を震わせた恐怖や不安、悲しみはいまも鮮明によみがえります。その「特別な体験」を自分なりに発信できたらと▼あれから11年。整えられる町や交通の一方で、ほとんどの被災地は人の流出に苦しんでいます。孤立死も絶えず、被災者のケアや生業(なりわい)の再建はいまも欠かせません。ところが国は予算を減らし、支援を打ち切ろうとしています▼「魅力あるまちづくりに携わりたい」と佐々木さん。黒須さんも「地域に密着し、貢献する企業で働きたい」。ふたりがのぞむ被災地の明日。それは苦難をのりこえ、一歩ずつでも前へ進もうとしている人びとの願いでもあるでしょう。








