2022年3月9日(水)
きょうの潮流
これが「おもてなしの国」ニッポンか。衝撃の映像に息をのみます。東日本入国管理センター(牛久入管)を舞台に、入管行政の闇に迫ったドキュメンタリー映画「牛久」(公開中)。収容中に死亡したスリランカ出身女性・ウィシュマさんの事件は、氷山の一角でした▼撮ったのは米国人のトーマス・アッシュ監督。面会ボランティアで牛久入管を訪ねたのが始まりでした。暴言に暴行、懲罰、医療放棄…。人権侵害を目の当たりにした監督は、撮影規制をくぐりぬけ、真実を世界に伝えることを決意します。「すばらしいアイデアだ」と歓迎する被収容者▼戦慄(せんりつ)を覚えるのは職員による「制圧」場面です。1人の被収容者を5、6人がかりでうつぶせに倒し、後ろ手に手錠をかける。息ができない、と訴える彼に「抵抗しないか」と怒鳴りつける。まるでテロリストや犯罪者扱いです。裁判資料として入手した記録映像には、特高警察を想起させる“拷問”が映し出されていました▼司法審査もないまま無期限に収容する日本の入管行政は、国連の恣意(しい)的拘禁作業部会からも「恣意的」で「国際法に違反する」と指摘されています▼難民認定も極端に少なく戦争から逃れてきた男性は「申請書を配っているだけ。見せかけだよ」と。強制送還を拒んだ際、職員から集団暴行を受け、裁判で係争中です▼ウクライナの事態に岸田文雄首相は「人道的観点」を考慮し、避難民の受け入れを表明しました。現実の非人道的な入管行政も直ちに是正すべきです。








