2022年3月8日(火)
校閲の目
軌を一にする
「日本維新の会は改憲問題で自民党と軌を一(いつ)にしている」。この「軌を一にする」を「機を一にする」と書くのは誤りです。
「軌」は「わだち、車の輪の通ったあと」「みちすじ」のことです。「一にする」は「同じくする」ことで、そこから考え方や方法が同じだという意味になります。
同じ発音の「揆を一にする」も意味は同じです。この「揆」は「はかりごと。やり方、方法」という意味で、江戸時代には「百姓一揆」などと使われ、今でも「年金一揆」や「一票一揆」のように用いられます。
一方、「機」は「ちょうどいい機会」のことです。「機を一にする」を「時期を同じくする意」として載せている国語辞書もありますが、一般には誤りとされます。「軌を一にする」にもそういう意味はありません。この場合は「時を同じくして」などと書くのがよいでしょう。
ほかに「気を一にする」も誤用とされますが、心を合わせる意味で「心を一にする」という言い方はあります。
安倍晋三元首相や維新の会がウクライナ危機に乗じて「核共有」発言をする「力の論理」の立場は、ロシアのプーチン大統領と軌を一にしています。「侵略やめよ」「国連憲章を守れ」という国際世論と心を一にして声を上げる時です。
(河邑哲也)








