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2022年3月3日(木)

ロシア非難が圧倒

国連緊急特別会合 発言要旨

 2月28日から米ニューヨークの国連本部で始まったウクライナ情勢に関する国連総会緊急特別会合での国連事務総長や各国の発言の要旨を紹介します。(順不同、発言はすべて28日)


戦争は答えでない

アントニオ・グテレス国連事務総長

 ウクライナでの戦闘は直ちにやめなければならない。ロシアの攻撃で、子どもを含め民間人の犠牲が出ている暴力激化の状況は、全く受け入れられない。もうたくさんだ。

 兵士は自分の兵舎に帰り、指導者は和平に向けて取り組むべきだ。ウクライナの主権と独立、領土保全は守られなければならない。

 ロシアの核戦力が「特別態勢」に引き上げられたことは、身が凍るような展開だ。核戦争という発想は想像を絶するものだ。誰に対しても核兵器の使用は正当化されない。

 攻撃は続いているが対話への道は常に開いたままにしておくべきだ。戦争は答えではない。ウクライナの人々もロシアの人々も平和が必要だ。われわれには平和が必要だ。

攻撃は国連を侮辱

アブドラ・シャヒド国連総会議長

 ロシアのウクライナへの軍事攻撃は、国連憲章と矛盾することを強調したい。

 国連憲章は、第2次世界大戦直後に主権平等の原則に基づいて起草された。国際紛争を、軍事力使用の脅しなしに平和的に解決することが示されている。

 ロシアが続けている軍事攻撃は、国連の創設者と国連を支持する人たちすべてを侮辱するものだ。暴力は停止すべきで、外交と対話が勝るべきだ。

 (ウクライナとロシア)両者の会談(停戦交渉)は希望の光を提供する。会談が緊張を鎮静化させ、平和への道を開くことを祈っている。(国連総会での)今日の議論を、平和に可能性を与えることに使おう。

国連の命運かかる

ウクライナ■セルゲイ・キスリツァ国連大使

 国連創設以来初めて、欧州の中心で本格的な戦争が起きている。死者数は増え続けている。ロシアのミサイルはキエフ近郊の重要インフラに照準を合わせている。多くの居住用建物が破壊され、幼稚園や病院が攻撃を受けた。ロシア軍はチェルノブイリ原発も押さえ、放射線レベルが大幅に上昇している。

 国連総会は独立した主権国家への侵略行為をすべて終わらせるため声を上げるべきだ。その要求には、ロシア軍の即時完全撤退、ウクライナ東部の立場に関するロシアの決定の取り消し、これらを支援したベラルーシの危険な役割の認知が含まれなければならない。

 もしウクライナが生き延びられなければ、国際平和も生き延びないだろう。国連の命運もかかっている。

武力に余地はない

欧州連合(EU)■オロフ・スクーグ国連大使

 EUは、ウクライナの独立と主権、領土保全を侵害する、ロシア軍による一方的侵攻を可能なかぎり強い言葉で非難する。侵略行為へのベラルーシの関与も非難する。

 われわれは、ロシアの核警戒レベルの引き上げにも危機感を募らせている。ロシアに対し、緊張緩和、元の警戒レベルへの引き下げを求める。侵略に伴う人命の犠牲、破壊の責任は全面的にロシアにある。軍事作戦の即時停止、ウクライナ領内からの全部隊・装備の無条件撤収、真剣な対話への参加を求める。

 EUは、国境変更のための武力行使や威圧が21世紀に果たす余地はないと確信する。国連憲章と国際秩序を擁護するため最善を尽くすことは、全加盟国の義務と責任だ。

加害者は裁かれる

デンマーク■マルティン・ビレ・ヘルマン国連大使

 北欧・バルト8カ国を代表して発言する。平和が勝利し、ウクライナの人が安全に家に戻れるまで、われわれはウクライナとともにある。財政的、人道的、軍事的支援の強化を検討する必要がある。

 ベラルーシのルカシェンコ政権が果たした役割についても、確固たる対応を求める。この意味のない戦争を止め、即時停戦し、軍を撤退させ、真の対話と交渉の道に戻るよう、ロシアに求める。

 民間人の死と戦争犯罪は記録され、加害者は責任を問われ、裁かれる。ウクライナは国際司法裁判所へ要請している。あらゆる法的手段を用いて、侵略者の責任を追及していく。国連総会はプーチン大統領に確固たるメッセージを送る力を持っている。

罪なき人が犠牲に

ジョージア■カハ・イムナゼ国連大使

 ウクライナでみられるのはロシア側の侵略行為であり、私たちは非難する。

 ロシアによるわが国への全面的な軍事攻撃(2008年)はすべての国にとって注意喚起となるべきだったが、数年後にウクライナで同じシナリオが起こることを防げなかった。私たちは、戦争が人々に悲惨な結果をもたらし、罪のない市民、女性や子どもが最も大きな犠牲を払うことを知っている。戦争を生き抜く人々にとって破壊的なだけでなく、後世にも引き継がれる。

 力による領土拡張やその脅迫は違法であり、容認できるものではない。ジョージアはロシアに対し、ただちに軍事行動をやめ、すべての軍隊・軍備を撤退させることを求める。ウクライナの独立、主権、領土保全に対する不動の支持を繰り返し表明する。

避難民に国境開く

ポーランド■クシシュトフ・シュチェルスキ国連大使

 国際社会が、欧州における第2次世界大戦後最大の人道危機のひとつに直面していることは間違いない。ベラルーシのルカシェンコ政権との共謀によって促進されたロシアの侵略の最初の3日間に、約50万人がウクライナから脱出し、30万人がポーランドに避難した。

 ポーランドは国境を開放している。ロシアの侵略に苦しめられ、命の危険にさらされているすべての国の国民は、ポーランドに避難所を求めることができる。

 今日だけで、125の国籍をもつ人々を受け入れた。100人のロシア人が含まれている。ポーランドは地政学的な超大国ではないが、連帯の超大国になりたい。祖国を守り、国の自由のために立ち上がったウクライナ人に賛辞を贈る。

核威嚇は憲章違反

オーストリア■アレキサンダー・マーシク国連大使

 決議に賛成することは、法の支配、国際法と国連憲章を守るために国連が責任を果たせること、国際社会がロシアの侵略や同様の恐ろしい行為を許容しないということを示すことになる。

 国連加盟国への攻撃は、私たちすべての国に対する攻撃だ。互いにつながりあうこの世界は一つの地域である。

 核による威嚇は、明確に国連憲章に違反するものだ。核によってもたらされる悲惨な人道的結果は、国境に関わりなくすべての人類にとっての脅威となる。

 私たちの多くがロシアと良い関係にあった。しかし、悪い行いに対し言うべきことを言い、やるべきことを果たすのが、誠実で良き友人である。この闇の中、国連憲章の違反を非難し、侵略の被害者に連帯を示すことは、私たちの道徳であり、法に基づく義務である。

手遅れになる前に

ブラジル■ロナルド・コスタ・フィリョ国連大使

 国連と世界にとって決定的な瞬間だ。ブラジルは(ロシア非難の)安保理決議に賛成票を投じ、それが採択されなかったことを残念に思っている。今こそ、国連の主要機関が協力し、われわれを戦争の惨劇から救う時だ。

 ここ数年、世界は東欧の安全とパワーバランスの悪化を目の当たりにしてきた。それが現在の危機への道を切り開いた。しかし、そのことは、加盟国の領土保全と主権への武力行使を正当化するものではない。

 また、手遅れになる前に好戦的な行為に終止符を打つよう求め、全関係者に対し、武器の供給や制裁措置、特に食糧安全保障などの重要分野で世界経済に影響を与えかねない決定を見直すよう呼びかける。

核ボタンの手離せ

カナダ■ロバート・レイ国連大使

 ロシアは不法な侵略戦争を開始した。プーチン大統領の帝国主義、植民地主義を復活させたいという願望にたきつけられた戦争だ。

 私たちが長年の討論の末に国連憲章に調印したのは、国家間に深刻な意見の相違があるときにも戦争に訴えないためだ。われわれは交渉のテーブルに向かう。法廷や調停者に向かう。これこそが紛争の解決方法だ。他の方法には狂気が横たわっている。

 私たちは、ロシアのプーチン大統領に言う。より多くの死者や負傷者、苦難が出る前にこの戦争をやめろ。脅しをやめろ。核のボタンから手を離し、二度とするなと。われわれの時代の現実により真剣に合理的に取り組めと。

小国危険にさらす

シンガポール■ブルハン・ガフール国連大使

 ロシアの侵略は国連憲章違反であり、シンガポールのような小国にとって現実の問題だ。力は正義だという国際秩序は小国を危険にさらす。ウクライナ独立は「歴史的な過ちで狂った決定」だったという主張に基づいて、独立国を侵略することは正当化できない。

 罪のない多くの命が奪われている。安全で妨害されない人道援助を呼び掛ける。すべての国の主権は尊重されなければならない。シンガポールは決議案を支持し、常に国連憲章を順守するために投票する。

 この決議は一方の肩を持つものではなく、国際法と国連憲章を守るものだ。すべての国、とりわけ小国は、国際法を順守するために団結しているという明確な意思を示さなければならない。

対話促す環境こそ

インドネシア■アルマナサ・クリスチアワン・ナシル国連大使

 ウクライナに対する軍事攻撃は容認できない。人々の命を重大な危険にさらし、地域および世界の平和と安定を脅かしている。

 全当事者が対話と外交による平和的解決を追求しなければならない。国連憲章および国際法の目的と原則は、全面的に支持されなければならない。インドネシアは、ウクライナ国内の人々への人道支援の、迅速かつ安全、制限のないアクセスが許可されるよう、全当事者に呼び掛ける。

 この国連総会での行動は、より広範な人類の利益に資するものでなければならない。インドネシアは、対話と外交を促す環境の醸成に向け、前向きに貢献するよう取り組む。

この犯罪記録せよ

コスタリカ■ロドリゴ・カラッソ国連大使

 ロシアは自国の核兵器の警戒態勢をとるよう命じたが、これは自身の侵略行為の結果であり、国際法および核不拡散条約(NPT)違反だ。ロシアは、ウクライナへの侵略においてクラスター弾の使用、民間人への攻撃、サイバー攻撃など、他の協定にも違反している。

 これらの行為の影響は長期間続くだろう。国際社会はロシアによるすべての犯罪を記録しておかなければならない。

 全加盟国は、人口密集地での爆発物の使用を非難し、この紛争の外交的解決に努力しなければならない。停戦、軍隊の撤退、軍事行動の停止を求める。暴力が脇に置かれれば、外交に立ち戻ることができる。世界をここまで悪化させた思考を終わらせよう。

誰も利益にならぬ

中国■張軍国連大使

 ウクライナで展開している事態は、中国が目撃したかったものではなく、いかなる当事者の利益にもならない。すべての関係者が自制し、外交的努力を強めるよう呼び掛ける。

 ウクライナは地政学的な対立の前哨ではなく、東側と西側の懸け橋の役割を果たすべきだ。市民の生命、財産、人道上のニーズは適切に保証されるべきだ。安保理常任理事国として、すべての国の主権と領土保全は尊重されるべきだというのが中国の一貫した明確な立場だ。

 ブロック対立に基づく冷戦思考を捨てるべきだ。新たな冷戦を引き起こすことからは何も得られない。一国の安全が他国の安全を犠牲にしてはならない。地域の安全保障は、軍事同盟の強化、拡大に依存すべきではない。

「憲章に基づく」と強弁

ロシア

 ロシアのネベンジャ国連大使は「危機の根本はウクライナ自身にある」と述べ、「ロシアはドネツクとルガンスクからの要請を受け、集団的自衛権を定めた国連憲章51条に基づく行動を決断した」と強弁しました。

 「ウクライナでは2014年に国家主義者と過激派がクーデターで政権を奪取し、反ロシア政策と北大西洋条約機構(NATO)加盟の動きを始めた」「NATO加盟は、超えてはならない一線であり、ロシアは対応策を余儀なくされた」と侵略を正当化しようとしました。


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