2022年2月28日(月)
きょうの潮流
哀愁をおびた音色と澄みきった歌声が、いっそう胸に迫ってきます。日本の琵琶にも似たウクライナの民族楽器バンドゥーラ。それを奏でるナターシャ・グジーさんです▼6歳のときに父親が働いていたチェルノブイリ原発の事故で被ばく。その後、民族音楽団の一員として来日し、2000年から日本を拠点に音楽活動をつづけています。ヒロシマ・ナガサキや3・11で原発事故にあった人びとに心をよせ、支援コンサートも開いてきました▼「日本が、私のもう一つのふるさと」。以前、本紙にそう語っていたグジーさんは日本とウクライナの平和のかけ橋にもなってきました。しかしいま、彼女の歌声は悲しみに包まれています▼家族や友人は無事か。戦火の子どもたちは、どんなに震えているか。自分の無力にさいなまれる日々。そんななかでも、つらく苦しいときに励まされ救われてきた音楽に母国への思いを託し、発信しつづけていくと▼各地のウクライナ人をはじめ、いま世界がロシア政権の無法に立ち上がっています。プーチン大統領の足元でも市民やアスリート、文化人や科学者たちが侵攻反対の声を次つぎに。一刻も早く戦争を止め、これ以上犠牲者を出さないために、自分ができることはないか。そう模索しながら▼日本では寒く凍るような冬も終わりを告げゆく季節ですが、人の世が一心に待ち焦がれているのは、安らかな春の訪れです。勇気と希望よ届け、グジーさんは歌います。「愛を込め、平和の花ひらく春を願って」








