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2022年2月23日(水)

ウクライナ情勢 ロシアの大国主義まざまざ

 ロシアがウクライナ東部の親ロシア派支配地域の「独立」を承認し、軍隊まで派遣すると決定しました。一連の動きをどうみればいいのか―国際法の原則、ロシアの歴史、ウクライナをめぐる外交交渉の過程から考えます。

「独立」承認

国際法上認められない

 ロシアのプーチン大統領が、隣国ウクライナ東部の親ロ派支配地域「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」が宣言した「独立」を「承認」しました。しかし、そもそも全当事者の合意のない一方的な「独立」は国際法上認められない行為です。

 さらにプーチン氏は「平和維持」などとしてロシア軍の派兵を命じました。ロシアの一連の行動は、他国の主権と独立、領土保全を尊重するという国連憲章や国際法の原則を乱暴に踏みにじるものです。

 今回の事態は、過去にロシアが行ったことの繰り返しです。

 ロシア政府は2008年8月、グルジア(現ジョージア)に軍事侵攻した上で、同国の領土である南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の「独立」を一方的に承認しました。14年3月には、ロシア軍を展開させた上で、ウクライナの領土であるクリミア自治共和国とセバストポリ特別市をロシアへ「編入」すると宣言しました。

 いずれも当時、国際社会は「独立」を認めず、ロシアによる国際法違反の蛮行だと厳しく非難しました。

 ロシアは1994年のウクライナの核兵器放棄に関する「ブダペスト覚書」など、さまざまな多国間、2国間条約を通じて、ウクライナの独立、主権、現国境の尊重、内政不干渉を確認しています。

 今回の事態は、ロシア自身が約束した一連の取り決めにすら反するものです。

勢力圏構想

露骨な覇権主義の論理

 今回のロシアの行動には、ロシアの勢力圏構想が色濃く反映されています。

 プーチン大統領の21日の演説は、「ウクライナはわれわれにとって歴史、文化、精神的空間の分かちがたい一部だ」で始まります。プーチン氏の「ロシアとウクライナの歴史的一体性」の論理です。

 旧ロシアの南西部(現在のウクライナ)の住民は自分たちをロシア人、正教徒であるとしてきたとし、その後ロシア帝国の一部となったと主張。近代ウクライナは、1917年のロシア革命後にレーニンら共産党の指導者が、ロシアの歴史的領土をおろかにもいくつかの国に切り分け、ウクライナはソ連の一共和国として形成されたにすぎないと非難しました。まさにウクライナの主権を否定する理論です。

 その上で、現在、ウクライナで起こっていることは、ロシア帝国時代と旧ソ連時代からの財産をウクライナ支配層が国民から盗み出していることだと非難。北大西洋条約機構(NATO)がロシアを友好国でなく敵国とみているのは、大国ロシアを解体しようとする米国に支援されたウクライナの腐敗した政治が根源だと批判しました。

 ウクライナが東部の二つの親ロ派地域との紛争での合意を実施していないとし、二つの地域の独立を承認。「もしウクライナ側が戦闘を続けるのなら、流血の惨事が起こる可能性については、すべてウクライナ政府の責任だ」と強調し、戦争も辞さない構えを示しました。

 ロシアはこれまでも旧ソ連圏の諸国を「勢力圏」として、軍事干渉や主権侵犯を繰り返してきました。2014年にウクライナのクリミアを併合した際は、「歴史的なロシアが統一を回復しようとしている」(プーチン大統領)とまで述べていました。

 ロシアの今回の行為は、自らの領土拡張のためには国際法も踏みにじる根深い大国主義・覇権主義が露骨な形で示されています。

合意投げ捨て

外交努力を踏みつけに

 ウクライナ情勢が緊迫するなか国際社会は平和的解決に向けた外交努力を強めてきました。

 ウクライナ東部の紛争をめぐっては、停戦と和平への道筋を示した「ミンスク合意」(2014年と15年)があります。同合意にはロシア、ウクライナと欧州安保協力機構(OSCE)と親ロシア勢力が調印しました。この合意実現に貢献したのがドイツとフランスです。両国とロシア、ウクライナの4者はこの間、協議を続け、緊張緩和をはかることを模索しました。1月末には東部地域の停戦合意を4カ国で改めて確認しています。

 ドイツのショルツ首相は15日にはモスクワを訪問。プーチン大統領と直接会談し、戦争の回避と協議を継続する方針で一致しました。ロシア側の緊張緩和の動きが期待されたものの、ロシアはウクライナ国境付近に集結させた軍の一部撤退を発表したのみ。具体的な撤退の動きはみせませんでした。

 21日には、フランス大統領府が米国とロシアの首脳会談の開催で原則合意したと発表。仲介したフランスのマクロン大統領は、バイデン、プーチンの両首脳とそれぞれ数時間におよび協議、ロシアがウクライナに侵攻しないことを条件に合意を取り付けていました。時間と場所については24日に米国のブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相の会談で話し合われるはずでしたが、プーチン氏の「独立」承認と派兵命令の動きとなりました。

 米国は「侵攻が始まる瞬間まで外交的解決を追求する」(サキ大統領報道官)と述べてきたものの、ロシア側の動きに、外交的解決への展望に疑問の声もあがっています。プーチン氏の動きは、国際的な外交努力を一方的に踏みにじるものになっています。


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