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2022年2月22日(火)

きょうの潮流

 色とりどりのニットを着たキューピー、広告を折り重ねた鶴、たばこの空き箱で作った傘、リボンの金魚、軍手のウサギ、タオルの犬、ウイスキーボトル人形…▼ああ、懐かしい。いつかどこかで見た手芸作品1000点超を展示する「ニッポン国おかんアート村」が、東京都渋谷公園通りギャラリーで開催中です。「おかんアート」とは、全国津々浦々の「お母さん」たちが身近な材料で手作りした小物群を指します▼戦後の高度経済成長期、「男は仕事、女は家庭」の性別役割分業の下で、多くの専業主婦が能力と意欲を手芸に注ぎ、独自の文化を培ってきた日々がしのばれ、胸が熱くなります▼このユニークなギャラリーは2020年に開館しました。「専門的な美術教育を受けていない人たちの自由な創作や表現を意味する“アール・ブリュット”の拠点となっています。障害のある方の作品もこれに含まれます。アートを通じて、さまざまな背景を持つ人たちが共生する多様性と包容力のある社会の実現に寄与していくことが目標です」と学芸員の大内郁さん▼「おかんアート」は現在も生み出され続け、各地にコミュニティーが形成されているといいます。みんなで話し合ったり、共感したり、一緒に作っていく過程と時間こそが貴重なのでしょう▼競争原理や市場価値とは無縁の、ただ楽しむためのささやかな手仕事。特別な才能を持つ人だけでなく、誰にでも開かれた表現の世界。コロナ禍に、人生の豊かさとは何かを問われる展覧会です。


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