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2022年2月17日(木)

大学生の困窮に支援

生活保護基準相当額を支給

横須賀市が独自制度

 虐待などで困窮しても生活保護を利用できない大学生らを支援しようと、神奈川県横須賀市は新たな独自の制度を設けます。対象は18~19歳の大学生や専門学生のうち自立援助ホームに入所し、市が認めた生活困窮者。生活保護基準相当額を最長18カ月支給します。生活保護制度の改善に向けて「大きな一歩」と関係者は評価します。制度は4月から開始予定。(新井水和)


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(写真)横須賀市役所(提供写真)

 生活保護を利用しながら大学などに進学することは現在、原則認められていません。生活保護制度は、15~64歳までを「稼働年齢層」として原則就労すべきだと規定しているからです。

 そのため保護世帯の子どもが大学などに進学すると、その子どもは保護の対象から外され(世帯分離)、保護費が減額されます。

短大生が訴え

 同市が新制度創設に踏み切るきっかけとなったのは、親に虐待され民間のシェルターに避難していた短大生からの訴えでした。

 この短大生は、病気療養での休学と困窮で一時的に生活保護を適用されていました。復学すれば保護が打ち切られるため、退学か休学を迫られたのです。

 新制度は、匿名男性が現金6000万円を市に寄付したことによりつくられた基金を活用。基金はほかにも看護学校への進学支援や施設の絵本配置などに使われています。新制度は、3月の定例議会で審議され、4月から始まる予定です。

 制度の運用期間について、市の担当者は「生活保護制度が拡充されるまでを想定している」と話します。市は生活保護制度の柔軟な運用と見直しについての要望書を厚生労働省へ提出しました。

 日本共産党の大村洋子市議は、「大前提として生活保護制度の抜本的な改正が必要」としたうえで、「目の前で困っている人を市として独自に支援することは大切です」と述べます。

 生活保護制度などに詳しい花園大学の吉永純教授は「生活保護制度から大学などの学生が排除されているもとで、大きな一歩だ」と評価します。

 一方で、対象者が自立援助ホーム入所者に限定されるなど間口が非常に狭い課題もあります。

 吉永教授は、現状でも生活保護世帯の4割近くが大学などへ進学していると指摘し、「そこへの支援が必要」だと強調します。

 保護世帯はかつて、高校進学が認められていませんでした。世帯分離せずに高校に進学できるようになったのは、進学率が全世帯の8割になった1970年でした。

「進学認めて」

 現在、大学や専門学校などへの進学率は8割を超えています。

 吉永教授は「進学率をみれば、大学なども十分同じ水準に達しています。大学等への進学も原則として認められるべきです」と訴えます。


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