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2022年2月2日(水)

きょうの潮流

 「恥ずかしながら、生きながらえて帰ってまいりました」。50年前のきょう。日本中が注目するなか、羽田空港にひとりの元日本兵が降り立ちました。横井庄一さん、56歳▼日本でも人気の観光地グアム島のジャングルで28年間、身をひそめていました。掘った穴をすみかに、あらゆるものを生きるために使い、なんでも食べる。飢えや病で次々と仲間が倒れていきましたが、そこから出ることはできませんでした▼横井さんが口にした「恥」とはなんだったのか。彼らは将兵の心得を訓示した「軍人勅諭」や「戦陣訓」を徹底してたたき込まれていました。そこには「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪禍の汚名を残すことなかれ」と▼軍隊は天皇のもの、死は鴻毛(こうもう)よりも軽しとの教えのもと、どれだけの命が無益の死を強いられたか。横井さんは帰国後の会見で「陛下さまに対しては、十二分にご奉公できなかったことを、私としては恥ずかしい次第」だと語りました▼軍靴で他国をふみにじり、国民までも死に追いやった無謀な戦争。敗戦後も遠い南の島に置き去りにされ、ただ膨大な時と労力を費やした元日本兵が故国の土を踏んでから半世紀。いまも日本では、その歴史をゆがめ、過去の戦争をたたえる勢力とのたたかいが▼生前、沈まなければ海の上を歩いてでも日本へ帰りたかったと話していたという横井さん。「今日無事」。密林生活よりも短かった「戦後」によく書いていた言葉です。穏やかで平和な日々がつづくように願って。


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