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2022年2月1日(火)

ミャンマー クーデター1年

軍政 激しい弾圧を継続

国民 結束し抵抗

 【ハノイ=井上歩】ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)から政権を奪って1日で1年となります。軍事政権は、クーデターに抵抗する民主派勢力と市民への激しい弾圧を継続。「国民統一政府(NUG)」などの民主派勢力は、政治運動や市民不服従運動(CDM)・ストライキを続け、各地で「国民防衛隊(PDF)」による武装抵抗を強めています。


地図

 「国民のかつてない団結と抵抗で、国軍は国を支配できていない」。クーデターから1年の状況について、ヤンゴン在住のジャーナリストは本紙の取材にこう語りました。1年の間に内戦は激化し、経済・社会危機が深刻化。「この状況が続けば破たん国家となり、国民が苦しむばかりだ」と不安を高めているといいます。

 民主派と市民は1日、軍政の支配に屈しない国民の結束した意思を世界に示すとして、全土で「沈黙のストライキ」を実施。沈黙ストは昨年12月にも行われ、ミャンマー各都市の街頭を無人にしました。

 軍政は国営紙に掲載した声明で、スト参加者には反テロ法や刑法を適用して「法的措置をとり」、「資産も差し押さえる」と脅迫。ストライキ終了時刻に拍手しただけでも取り締まるとしました。

 人権団体・政治犯支援協会によると、クーデター後の軍政の弾圧による死者は1月末の段階で約1500人に達しています。累計約1万2000人が拘束され、約8800人が依然拘束下にあります。

 反軍政勢力と国軍の武力衝突が各地で激化し、国連の推定で60万人以上の避難民が発生。民主派は国軍による複数の住民虐殺事件を告発しています。

 NUGを支持するチョーモートゥン国連大使は27日付の書簡で、国連に「ミャンマー国民の命を救ってほしい」と要請。「国軍は国民に対する暴力をいっそう激化させている。これ以上、人道に対する罪と戦争犯罪の犠牲者を出さないようにしてほしい」と強調し、国連憲章に基づきミャンマー国民を保護する措置を直ちにとるよう訴えました。

電力不足・統治強引・苦しむ国民

 「停電はこれまで朝か夕に2時間ぐらいだったが、今年に入ってから5時間以上だ」。ミャンマー独立系メディアの「ミッジマ」は1月、停電の頻発に困惑するヤンゴン市民の声を伝えました。

 軍事政権下の電力・エネルギー省は1月、発電所の稼働が総発電量の65%にとどまっており、朝2時間、夕方2時間の電力使用を制限し、一部地域を停電させると発表。軍政トップのミンアウンフライン国軍総司令官も23日、マンダレーでの集会で「ミャンマーには十分な電力がない」と認め、「LED電球を使えば節電になり、電気料金も節約できる」などと節電を促しました。

 電力不足の原因をエネルギー省は、燃料価格の高騰、紛争の影響による設備の損傷などと説明しましたが、独立系メディアは▽クーデターによる新規発電事業の中止▽CDMによる税金や公共料金の不払い▽軍事政権の財政難―が原因にあると指摘します。

 CDMには教員、医療関係者、銀行員など40万人以上の公務員が参加し、不当な権力の下での就業を拒否。銀行業務や行政が正常に行えなくなり、預金は引き出され、宝くじを買う人もいなくなりました。

 軍政は、現金不足や通貨チャットの下落など金融・財政上の混乱に直面。外貨も不足したとみられ、燃料輸入を減らすためにミンアウンフライン総司令官が国民に「食用油の節約」を呼びかけたこともありました。

 経済・社会危機の深まりは、軍政の統治を揺るがす一方、国民の生活に大きな打撃を与えています。

貧困層が増加

 国際労働機関(ILO)は28日、ミャンマーで2021年に160万人が失業し、総労働時間が前年比18%減少したとする報告書を発表。国連開発計画(UNDP)は、ミャンマーで22年、中間層が消滅し、貧困層が人口の半数近くにまで増加すると分析しました。

 ヤンゴン在住のジャーナリストによると、人々は物価上昇や失業で苦しむだけでなく、安全面で不安を高めており、警官や兵士に迫害されたり、爆発に巻き込まれたりすることを恐れて外出を控えているといいます。

 チンやザガインなどの各州・地方では、反軍政の武装勢力と国軍との戦闘が激しく続いており、最大都市ヤンゴンでも治安部隊などへの襲撃が増加しています。

 独立系メディア「ミャンマー・ナウ」によると、チン州の反軍政武装勢力の連合体は昨年4月~12月、国軍と184回衝突し、国軍側に1000人以上の死者が出たと発表。抵抗勢力は山岳地帯で住民の支援を受け、装備で上回る国軍部隊相手に戦闘で優位に立ってきたとしています。

内戦の長期化

 国内では最近、「抵抗勢力を掃討し、ミャンマー全土を掌握するというミンアウンフラインの計画は、決して実現しない」(ジャーナリスト)との認識が広がっているといいます。同時にそれは内戦の長期化を意味すると懸念を呼んでいます。

 国営紙によると、軍政トップのミンアウンフライン総司令官は1月20日の会議で、カンボジアのフン・セン首相との会談で宣言した少数民族勢力との停戦や和平協議に、民主派勢力を含めない考えを表明。「武装勢力とテロリストは異なる」などと述べ、東南アジア諸国連合(ASEAN)が求める「全当事者との対話」には応じず、民主派の弾圧を継続する姿勢を示しました。


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